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タングステンカーバイドも3Dプリントできる時代に — 超硬金属造形の最新ブレークスルー - 3Dプリンタブログ | 3DLab
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タングステンカーバイドも3Dプリントできる時代に — 超硬金属造形の最新ブレークスルー

3DLab
2026年4月3日
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ダイヤモンドに次ぐ硬さを持つ「タングステンカーバイド」。切削工具やドリルの刃先に欠かせないこの超硬合金が、ついに3Dプリントで造形できるようになりました。2026年2月、広島大学の研究チームが発表した「レーザー・ホットワイヤ照射法」は、従来不可能とされてきた超硬金属のアディティブ・マニュファクチャリング(積層造形)に道を開く画期的な技術です。この記事では、この新技術の仕組みと産業界へのインパクトをわかりやすく解説します。

タングステンカーバイドとは? — なぜ3Dプリントが難しかったのか

タングステンカーバイド(WC)は、非常に硬い炭化タングステンの粒子を、延性のあるコバルト(Co)という結合剤でつなぎ合わせた複合材料です。ビッカース硬度は1,400 HVを超え、サファイアやダイヤモンドのすぐ下のランクに位置します。この圧倒的な硬さから、金属加工用の切削工具、建設用ドリル、鉱山機械の摩耗部品などに広く使われています。

しかし、その硬さこそが3Dプリントの最大の障壁でした。従来の金属3Dプリント技術(レーザー粉末床溶融法など)では、材料を完全に溶融させる必要があります。タングステンカーバイドを高温で溶かすと、微細な炭化タングステン粒子が粗大化(グレイングロース)したり、分解したりして、本来の硬さが失われてしまうのです。加えて、冷却時にクラック(ひび割れ)が発生しやすく、実用レベルの製品を得ることが困難でした。

広島大学の新技術 — レーザー・ホットワイヤ照射法とは

2026年2月9日、広島大学大学院先進理工系科学研究科の丸本啓太助教らの研究チームが、この課題を克服する新しいアプローチを発表しました。共同研究には三菱マテリアル(株)も参加しています。

この「レーザー・ホットワイヤ照射法」の最大のポイントは、材料を完全に溶かすのではなく「軟化」させるという発想の転換です。具体的には、あらかじめ電気加熱されたWC-Coワイヤ(ロッド)にレーザーを照射し、コバルトの融点以上でありながら炭化タングステン粒子が粗大化しない温度域でコントロールしながら積層していきます。

研究チームは2種類のツールパス(積層経路)を検証しました。ロッド先行方式では材料の分解が起きやすかったのに対し、レーザー先行方式ではニッケル基合金の中間層と温度制御を組み合わせることで、欠陥のない緻密な造形体を実現しました。得られた製品のビッカース硬度は1,400 HVを超え、従来の焼結法で製造された超硬合金と同等以上の性能を示しています。

従来の粉末冶金法との違い — コスト削減と設計自由度

これまでタングステンカーバイド製品の主な製造法は「粉末冶金法」でした。この方法では、WC-Coの粉末を金型に入れ、高温・高圧で焼結します。しかし、この工程には大きな制約があります。

まず、金型が必要なため複雑な形状の製造が難しく、設計の自由度が限られます。また、焼結後のブロックから製品形状を削り出す際に大量の材料が切削屑として廃棄されます。タングステンやコバルトはいずれもレアメタルであり、資源の有効活用という観点からも課題がありました。

新しい3Dプリント技術では、必要な場所に必要な量だけ材料を堆積できるため、材料のムダを大幅に削減できます。さらに、従来の金型では実現できなかった複雑な内部構造や自由曲面を持つ部品の造形が可能になります。

産業応用の可能性 — マルチマテリアル時代の幕開け

この技術が実用化されると、製造業に大きな変革をもたらす可能性があります。最も期待されているのが「マルチマテリアル造形」です。

たとえば、ドリルやカッターの刃先など摩耗が激しい部分にのみ超硬合金をプリントし、本体部分は強靭で軽量な鋼材で作るという「ハイブリッド工具」が実現できます。これにより、高価なタングステンカーバイドの使用量を最小限に抑えながら、工具の寿命を最大化することが可能です。

また、摩耗した工具の刃先部分だけを3Dプリントで「補修」するリペア技術への応用も期待されています。現在は刃先が摩耗したら工具全体を交換するのが一般的ですが、必要な部分だけ超硬合金を再積層すれば、コスト削減と資源の有効活用の両方を実現できます。

研究成果は学術誌『International Journal of Refractory Metals and Hard Materials』(Volume 136, Article 107624)に掲載され、2026年4月号に印刷版が発行予定です。

3Dプリント技術の進化が示す未来

今回の広島大学の成果は、3Dプリント技術が「プラスチックの試作品を作る道具」から「最先端の金属材料を自在に操る製造技術」へと進化していることを示しています。FDM(熱溶解積層法)方式の家庭用3Dプリンターで樹脂を造形する段階から、チタン、アルミニウム合金、そしてついにはタングステンカーバイドという超硬金属まで——対応できる材料の幅は年々拡大しています。

もちろん、今回の技術がすぐに一般向け3Dプリンターに搭載されるわけではありません。レーザー・ホットワイヤ方式は産業用の大型装置が必要であり、研究段階から量産技術への移行にはまだ時間がかかるでしょう。しかし、「3Dプリントでは作れない」と言われていた材料が一つずつ克服されていく流れは確実に続いています。今後の技術発展に注目です。

よくある質問

タングステンカーバイドの3Dプリントは家庭用プリンターでもできますか?

現時点では不可能です。レーザー・ホットワイヤ照射法は産業用の高出力レーザー装置が必要で、家庭用のFDMやSLA方式のプリンターでは対応できません。ただし、将来的に技術が進歩すれば小型化・低コスト化が進む可能性はあります。

従来の焼結法と比べて、3Dプリントされたタングステンカーバイドの品質は劣りますか?

広島大学の研究によれば、レーザー・ホットワイヤ法で造形された製品はビッカース硬度1,400 HV以上を達成しており、従来の焼結法と同等以上の硬さです。目に見える気孔や欠陥も確認されていません。

この技術はいつ頃実用化されますか?

研究段階から量産技術への移行には通常数年かかるとされています。共同研究パートナーである三菱マテリアルが産業応用に向けた開発を進めていますが、具体的な実用化時期は公表されていません。

タングステンカーバイド以外の超硬材料も3Dプリントできるようになりますか?

今回の「軟化させる」アプローチは、完全溶融が難しい他の超硬材料にも応用できる可能性があります。セラミック系複合材料や他のサーメット(セラミックと金属の複合体)への展開が期待されています。

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