
Prusa Core Oneレビュー|オープンソースの雄が放つ密閉型CoreXY機の実力と競合比較
Prusa Researchが2025年初頭に出荷を開始した「CORE One」は、同社初の密閉型CoreXY方式3Dプリンターです。長年ベッドスリンガー型(i3方式)で定評を築いてきたPrusaが、ついにCoreXYに舵を切ったことで大きな注目を集めました。本記事では、造形品質・速度・静音性・マルチマテリアル対応の4軸で実力を評価し、最大のライバルであるBambu Lab P1Sとの比較も交えながら、どんなユーザーに向いているのかを解説します。
Prusa CORE Oneの基本スペック
CORE Oneは、Prusaの主力機MK4Sのコンポーネントをベースに、CoreXYキネマティクスと密閉筐体を組み合わせた新設計の機種です。レーザーカット&粉体塗装のスチールフレームにより高い剛性を確保し、内部のプリントパーツにはPrusament PC-CFを採用しています。
主要スペックは以下のとおりです。
- 造形方式:CoreXY(デュアル固定モーター)
- 造形サイズ:250 × 220 × 270 mm(約15リットル)
- 最大トラベル速度:600 mm/s(Input Shaper対応)
- 最高ノズル温度:290°C(HTホットエンド装着時は400°C対応予定)
- 最高ベッド温度:120°C
- チャンバー温度:最大55°C(アクティブ加温+スマート換気)
- レイヤー高さ:0.05〜0.30 mm
- エクストルーダー:Nextruder ダイレクトドライブ(10:1遊星ギアボックス)
- 接続:Wi-Fi / Ethernet / USB
- 本体重量:22.5 kg
- 価格:キット版 約925ドル/完成品 約1,200ドル(税別)
MK4Sからのアップグレードキットも用意されており、既存ユーザーが段階的に移行できる点もPrusaらしい配慮です。
造形品質と速度のバランス
CORE Oneの造形品質は、Tom's Hardwareのレビューで4.5/5の高評価を獲得しています。特に最初のレイヤーの仕上がりが秀逸で、ロードセルセンサーによる自動キャリブレーションとPEIスプリングスチールシートの組み合わせが安定した定着を実現しています。
プリント速度については、CoreXY化によりMK4S比で約20%の高速化を達成したとされています。ただし、最大トラベル速度600 mm/sはあくまでトラベル(非印刷移動)の値であり、実際の印刷速度は素材や設定により異なります。Prusaの設計思想として「速度よりも品質の一貫性」を優先する傾向があり、工場プリセットではやや控えめな速度設定になっています。
高流量CHT(Core Heating Technology)ノズルの標準搭載により、ノズル内での溶融効率が高く、レイヤー高さ0.3mmでの高速造形でも安定した吐出量を確保しています。200種類以上の素材プロファイルがPrusaSlicerに収録されており、PLA・PETG・TPUはもちろん、ABS・ASA・PC・PA(ナイロン)といったエンジニアリング素材にも対応します。
静音性とユーザー体験
CORE Oneの大きな特長のひとつが静音性です。動作時の騒音レベルは平均約48dBと報告されており、これは静かなオフィスや図書館と同程度の音量です。0.9°ステッピングモーターとTrinamic 2130ドライバーの組み合わせがVFA(Vertical Fine Artifacts)を抑制し、滑らかな動作に貢献しています。
ユーザーインターフェースは3.5インチのカラータッチスクリーンを搭載。セットアップから初回印刷まで約10分で完了するとPrusaは謳っています。オフライン環境でも基本的な印刷操作が可能で、クラウド接続を必須としない点はプライバシー意識の高いユーザーには安心材料でしょう。
また、密閉筐体によりABSやASAの印刷時に発生する臭いや微粒子を軽減できます。オプションのHEPAフィルターを追加すれば、リビングや子ども部屋での使用もより安心です。
マルチマテリアルと拡張性
CORE Oneは、Prusaのマルチマテリアルユニット「MMU3」に対応しており、最大5色の同時印刷が可能です。さらに、今後リリース予定の「INDX Toolchanger」によるパッシブ式ツールチェンジシステムでは最大8素材への対応が計画されています。
ノズル交換はツールレスで行え、0.25〜0.8mmの各サイズに素早く切り替えできます。360度タービン冷却システムにより、ブリッジやオーバーハングの品質も高いレベルを維持しています。
オープンソースのファームウェアとPrusaSlicerの組み合わせにより、上級者は細かいパラメータチューニングが可能です。サードパーティ製フィラメントも自由に使用でき、素材の選択肢に制限がない点は、Prusaエコシステムの大きな強みです。
Bambu Lab P1Sとの比較
CORE Oneの最大の競合機種はBambu Lab P1Sです。2026年2月の価格改定後、P1SはAMS付きで549ドルまで値下がりしており、価格面では大きな差があります。両機のスペックを比較してみましょう。
| 項目 | Prusa CORE One | Bambu Lab P1S |
|---|---|---|
| 価格(2026年6月時点) | キット 約925ドル/完成品 約1,200ドル | 単体 約449ドル/AMS付 約549ドル |
| 造形サイズ | 250 × 220 × 270 mm | 256 × 256 × 256 mm |
| 最大速度 | 600 mm/s(トラベル) | 500 mm/s |
| チャンバー加温 | あり(最大55°C) | なし(密閉のみ) |
| マルチマテリアル | MMU3(5色) | AMS(4色、最大16色) |
| 騒音レベル | 約48dB | 約50dB |
| オープンソース | はい(ファームウェア・スライサー) | いいえ |
| オフライン使用 | 完全対応 | 初回セットアップ時にネット必要 |
CORE Oneが優れる点は、アクティブチャンバー加温によるエンジニアリング素材の安定性、オープンソースによるカスタマイズ性、修理のしやすさ(接着・溶接箇所なし、ドライバー1本で分解可能)、そしてオフライン完全対応です。
P1Sが優れる点は、圧倒的なコストパフォーマンス、AMS Liteによる最大16色対応、そして箱出し即戦力のセットアップ簡便さです。
「価格を抑えてすぐに高速印刷を始めたい」ならP1S、「オープンソースの理念に共感し、長期的な拡張性と修理性を重視する」ならCORE Oneが適しています。エンジニアリング素材を多用する方には、チャンバー加温のあるCORE Oneが明確に有利です。
よくある質問
Prusa CORE OneはMK4Sからアップグレードできますか?
はい、MK4Sからの変換キットが2025年3月より販売されています。既存のMK4Sコンポーネントを活かしながら、CoreXY筐体にアップグレードできる設計です。
CORE Oneでサードパーティ製フィラメントは使えますか?
使えます。オープンソースのPrusaSlicerで自由に素材プロファイルを作成・編集でき、1.75mm径のフィラメントであればメーカーを問わず利用可能です。
CORE Oneの騒音レベルはどのくらいですか?
動作時の平均騒音は約48dBと報告されており、同クラスのCoreXY機の中ではかなり静かです。深夜の運用でも気になりにくいレベルです。
密閉筐体のままPLAを印刷できますか?
はい、スマート換気システムにより、密閉状態でもPLAやPETGを安定して印刷できます。高温を嫌う素材では自動的に排気が行われます。
Bambu Lab P1Sと比べて値段が高いのはなぜですか?
CORE Oneはアクティブチャンバー加温、オープンソースファームウェア、EU・米国での製造、長期的な修理サポートを提供しています。部品単位での交換が可能な設計思想と、10年以上にわたるPrusaの継続的サポート実績が価格に反映されています。
参考リンク
- Prusa CORE One+ 公式製品ページ — Prusa Research
- Prusa CORE One Review: Better in a Box — Tom's Hardware
- Introducing Prusa CORE One — Prusa Blog
- Prusa Core One: Technical Specifications and Pricing — 3D Printing Industry
- Bambu Lab P1 Series — Bambu Lab



