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MITが3時間・50セントで電動モーターを丸ごと3Dプリント — マルチマテリアル印刷が拓く未来 - 3Dプリンタブログ | 3DLab
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MITが3時間・50セントで電動モーターを丸ごと3Dプリント — マルチマテリアル印刷が拓く未来

3DLab
2026年3月18日
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もし電動モーターを、たった3時間・材料費わずか50セント(約75円)で丸ごと3Dプリントできるとしたら? 2026年2月、MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究チームがそんな夢のような研究成果を発表しました。5種類の素材を1台のプリンターで同時に押し出し、完全に動作するリニアモーターを一括造形する技術です。この研究は、3Dプリンティングの未来を大きく変える可能性を秘めています。

5素材を1台で押し出す——MITの新型マルチマテリアル3Dプリンター

2026年2月18日、MIT電気工学・コンピュータサイエンス学科(EECS)の研究チームが、学術誌『Virtual and Physical Prototyping』に画期的な論文を発表しました。タイトルは「Fully 3D-Printed Electric Motor Manufactured via Multi-Modal, Multi-Material Extrusion」(マルチモーダル・マルチマテリアル押出による完全3Dプリント電動モーター)です。

この研究で使われた3Dプリンターには、4種類の押出機構(エクストルーダー)が搭載されています。フィラメント押出機、ペレット押出機、インク押出機、そしてヒーターです。それぞれが異なる形態の素材に対応しており、溶かしたフィラメントを押し出すものもあれば、導電性インクのように圧力で吐出するものもあります。

この4つのエクストルーダーを使い分けることで、5種類の機能性素材を一括して造形します。誘電体(絶縁素材)、導電性素材、軟磁性素材、硬磁性素材、そして柔軟性素材の5つです。プリンターはノズルを自動的に切り替えながら、1層ずつデバイスを積み上げていきます。

約3時間・50セントで完成するリニアモーター

研究チームはこのプラットフォームを使い、完全に動作するリニアモーター(直線運動をするモーター)を造形しました。造形にかかった時間はわずか約3時間。材料費はたった50セント(約75円)と見積もられています。

印刷後に必要な後処理はたった1つ、硬磁性素材の着磁(磁化)のみです。これによりモーターは完全に機能するようになります。テストの結果、この3Dプリント製モーターは、複雑な油圧アンプを使う一般的なリニアエンジンの数倍のアクチュエーション(駆動力)を生み出すことに成功しました。

主任研究者のルイス・フェルナンド・ベラスケス=ガルシア氏(MIT マイクロシステムズ・テクノロジー研究所 主席研究員)は「押出という同じ印刷手法の、まったく異なる表現方法を1つのプラットフォームにシームレスに統合する方法を見つけなければなりませんでした」と語っています。

なぜマルチマテリアル3Dプリントが革命的なのか

従来の3Dプリンターは基本的に1種類、多くても2〜3種類の素材しか扱えませんでした。そのため、電気的・磁気的な機能を持つ部品を作るには、印刷後に手作業で組み立てる必要がありました。

MITの今回の技術は、導電性・磁性・絶縁性・柔軟性という異なる物性を持つ素材を1回の印刷工程で統合します。つまり、コイル部分、磁石部分、構造体、柔軟な接合部がすべて一体成型されるのです。

これは製造業に大きなインパクトをもたらす可能性があります。ロボット、医療機器、宇宙探査機器など、小型モーターやアクチュエーターを必要とする分野で、設計から試作までのリードタイムが劇的に短縮されるからです。ベラスケス=ガルシア氏は「これは素晴らしい成果ですが、ほんの始まりにすぎません。ハードウェアをその場で一度に作ることで、ものづくりのあり方を根本的に変える機会があるのです」と述べています。

今後の展望——回転モーターからより複雑なデバイスへ

現時点で造形に成功しているのはリニアモーター(直線運動型)ですが、研究チームは今後、回転型モーター(ロータリーモーター)の完全3Dプリントにも挑戦する予定です。

さらに、現在は印刷後に別工程で行っている着磁ステップを、印刷プロセスに統合することも目指しています。これが実現すれば、プリンターからモーターが出てきた瞬間にそのまま動作する、真の「ワンステップ製造」が可能になります。

また、エクストルーダーの種類をさらに増やすことで、より複雑な電子デバイスの一括造形も視野に入っています。この研究はEmpiriko CorporationおよびLa Caixa Foundationの資金支援を受けて進められています。

私たちのものづくりにどう影響する?

この技術はまだ研究段階ですが、3Dプリンターの「素材の壁」を打ち破る大きな一歩と言えます。家庭用の3Dプリンターにマルチマテリアル機能が搭載されるのはまだ先の話かもしれませんが、産業用途ではすでに現実味を帯びています。

3DLabのワークショップでも、こうした最先端の研究動向を踏まえながら、3Dプリンターの可能性について一緒に考えていければと思います。1種類の素材でものを作る楽しさを体験しつつ、「いつか複数の素材で動くデバイスを自分でプリントできる日」を想像してみるのも面白いのではないでしょうか。

よくある質問

MITの3Dプリント電動モーターはどんな種類のモーターですか?

今回造形されたのはリニアモーター(直線運動型)です。回転するタイプのモーターではなく、直線的な駆動力を生み出します。研究チームは今後、回転型モーターへの応用も計画しています。

5種類の素材とは具体的に何ですか?

誘電体(絶縁体)、導電性素材、軟磁性素材、硬磁性素材、柔軟性素材の5つです。これらがモーターの絶縁、電気配線、磁気回路、永久磁石、可動部分の役割をそれぞれ果たします。

この技術は家庭用3Dプリンターでも使えますか?

現時点では研究用のカスタムプリンターで実現された技術であり、家庭用製品として市販されているものではありません。ただし、この研究がマルチマテリアル3Dプリンターの実用化を加速させる可能性は高いとされています。

印刷後にどんな後処理が必要ですか?

必要な後処理は硬磁性素材の着磁(磁化)のみです。着磁が完了すれば、モーターはそのまま動作します。研究チームはこの工程も印刷プロセスに統合することを目指しています。

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