
iPhoneが3Dスキャナーになる!LiDARで身の回りのモノをスキャンして3Dプリントする方法
「3Dスキャンって高価な機材が必要でしょ?」と思っていませんか。iPhone ProシリーズにはLiDAR(ライダー)センサーが搭載されていて、無料アプリを使えば誰でも身の回りのモノを3Dスキャンできます。この記事では、iPhoneで3Dスキャンしてから3Dプリンターで出力するまでの手順を、初心者の方にもわかるように順を追って解説します。
LiDARセンサーとは?iPhoneで3Dスキャンができる仕組み
LiDAR(Light Detection and Ranging)は、レーザー光を当てて物体までの距離を測るセンサー技術です。もともとは自動車の自動運転や測量の分野で使われていましたが、2020年にAppleがiPad ProにLiDARセンサーを搭載したことで、一般ユーザーにも身近なものになりました。
LiDARセンサーは毎秒数百万の赤外線レーザーを照射し、反射光が戻ってくるまでの時間から距離を計算します。この仕組みで、対象物の立体的な形状を高い精度で取得できます。iPhoneのカメラと組み合わせれば、形状データにテクスチャ(色・模様)を貼り付けた3Dモデルも作れるのです。
LiDAR搭載iPhone・iPad一覧
LiDARセンサーが載っているのは、次のProモデルです。お手持ちのデバイスが対応しているか確認しましょう。
- iPhone:iPhone 12 Pro / Pro Max 以降のProモデル(iPhone 13 Pro、14 Pro、15 Pro、16 Pro、17 Proなど)
- iPad:iPad Pro(2020年モデル以降)
LiDARセンサーのないiPhoneでも、写真をもとにする「フォトグラメトリ」方式でスキャンできるアプリはあります。ただし精度や手軽さでは、LiDARスキャンのほうが上です。
おすすめ無料3Dスキャンアプリ:Polycam vs Scaniverse
iPhone用の3Dスキャンアプリはいくつかありますが、初心者におすすめなのはPolycamとScaniverseの2つで、どちらも無料で使い始められます。
Polycam(ポリカム)
Polycamは世界で最も人気のある3Dスキャンアプリの一つです。LiDARスキャン、写真からの3Dモデル生成(フォトグラメトリ)、部屋全体のスキャン(Room Mode)など、さまざまな撮影モードを備えています。無料版でもLiDARスキャンと基本的なエクスポート(GLTF形式)ができ、Pro版にアップグレードすると、OBJ・STLなど12種類以上の形式でエクスポートできるようになります。
Scaniverse(スキャニバース)
ScaniverseはNiantic Spatial社が提供する完全無料の3Dスキャンアプリです。いちばんの魅力は、無料で無制限にスキャンでき、OBJ・FBX・STLなどの主要フォーマットでエクスポートできること。処理はすべてデバイス上で行われるので、インターネット接続も不要です。3Dプリントが目的なら、無料でSTL出力できるScaniverseが特におすすめです。
実践!3Dスキャンの手順(Scaniverseを例に)
ここからは、Scaniverseを使った3Dスキャンの具体的な手順を紹介します。
ステップ1:アプリをインストールする
App Storeで「Scaniverse」を検索してインストールします。起動したら、カメラへのアクセスを許可してください。
ステップ2:スキャン対象を準備する
初めてのスキャンには、次のような対象がおすすめです。
- マグカップやフィギュアなど、手のひらサイズの物体
- 表面に模様やテクスチャがある物(無地の白い物体はスキャンしにくい)
- 動かない・変形しない物体
明るい場所に対象物を置き、周囲を360度歩き回れるスペースを確保しましょう。
ステップ3:スキャンを実行する
アプリを開いて「New Scan」をタップし、スキャンモードで「LiDAR」を選びます。録画ボタンを押したら、対象物の周りをゆっくり歩きながらiPhoneを向けてください。気をつける点は次のとおりです。
- 対象物から30〜60cm程度の距離を保つ
- 急に動かさず、ゆっくり安定して移動する
- 上・横・少し下からなど、複数の角度から撮影する
- 画面上のメッシュ(網目模様)が対象物を覆っていくのを確認する
一周回って録画を停止すると、アプリが自動で3Dモデルを生成してくれます。
ステップ4:スキャンデータを確認・編集する
生成された3Dモデルを、ピンチイン・ピンチアウトで確認します。床面や周囲の不要な部分が入っている場合は、アプリ内のトリミング(クロップ)機能で切り取りましょう。
スキャンデータを3Dプリントする方法
スキャンした3Dモデルを3Dプリンターで出力するには、いくつか準備が必要です。
ステップ5:STL形式でエクスポートする
Scaniverseでは、スキャン画面から「Share」→「Export Model」を選び、ファイル形式でSTLを選択します。AirDropやクラウドストレージ(Google Drive、iCloud Driveなど)でパソコンに転送してください。
Polycamの無料版でエクスポートできるのはGLTF形式だけです。STL形式で出力するにはPro版が必要ですが、GLTFファイルをBlenderなどの無料3Dソフトで読み込んでSTLに変換する方法もあります。
ステップ6:スライサーソフトで印刷設定する
エクスポートしたSTLファイルを、3Dプリンター用のスライサーソフト(UltiMaker Cura、PrusaSlicer、Bambu Studioなど)で開き、次の点を調整しましょう。
- サイズの調整:スキャンデータは実物大で取り込まれることが多いので、プリントしたいサイズにスケーリングします
- 向きの調整:サポート材が少なくなる向きに配置します
- メッシュの修復:スキャンデータには穴や欠けがあることがあります。スライサーの自動修復機能や、Windows標準の「3D Builder」アプリで修復できます
ステップ7:3Dプリントする
スライスが終わったら、3Dプリンターで出力します。スキャンデータは複雑な形状が多いので、次の設定がおすすめです。
- レイヤー高さ:0.15〜0.2mm(細部を再現したい場合は0.1mm)
- インフィル:15〜20%(飾り用なら低めでOK)
- サポート材:あり(オーバーハングがある場合)
- フィラメント:PLAが初心者におすすめ(扱いやすく、仕上がりもきれい)
きれいにスキャンするためのコツ
3Dスキャンの品質を上げるコツをいくつか紹介します。
- 照明を均一にする:強い影ができるとスキャン精度が落ちます。曇りの日の屋外や、間接照明の室内が向いています
- 反射する素材を避ける:金属やガラスなど光を反射する素材では、LiDARのレーザーが正しく反射しないため、スキャンが難しくなります
- 背景をシンプルにする:対象物の後ろにごちゃごちゃした物があると、トリミングの手間が増えます
- 複数回スキャンする:1回でうまくいかなくても、角度や距離を変えて何度か試しましょう
よくある質問
LiDARセンサーがないiPhoneでも3Dスキャンできますか?
はい、可能です。PolycamやScaniverseには、写真から3Dモデルを生成する「フォトグラメトリ」モードがあります。ただ、LiDARスキャンと比べて多くの枚数を撮る必要があり、処理時間も長くなります。手軽さと精度を求めるなら、LiDAR搭載モデルがおすすめです。
スキャンしたデータはどのくらいのサイズになりますか?
スキャン範囲や解像度によりますが、1つのスキャンデータ(STL形式)はおおよそ10〜100MB程度です。スライサーソフトでメッシュの簡略化(デシメーション)を行えば、ファイルサイズを大幅に減らせます。
どんなものでもスキャンできますか?
ガラスのコップのような透明なもの、金属の鏡面仕上げのように鏡面反射するもの、ワイヤーのような非常に細い線状のものは、LiDARセンサーでは正確にスキャンするのが難しいです。マットな質感で、ある程度の大きさがある物体が最適です。
3Dプリンターを持っていなくてもプリントできますか?
はい。DMM.makeやJLCPCBなどの3DプリントサービスにSTLファイルをアップロードすれば、プリントした完成品を届けてもらえます。3DLabのワークショップでも3Dプリンターを体験できるので、お気軽にご参加ください。
参考リンク
- Polycam公式サイト — Polycam Inc.
- Scaniverse公式サイト — Niantic, Inc.
- Polycam LiDARスキャナーガイド — Polycam Inc.
- iPadとiPhoneのLiDARスキャナについて — Apple
- Best 3D Scanning Apps in 2025 — 3D Mag



