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建設3Dプリンターで家が建つ時代へ — 日本初の2階建て住宅が耐震基準をクリアした衝撃 - 3Dプリンタブログ | 3DLab
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建設3Dプリンターで家が建つ時代へ — 日本初の2階建て住宅が耐震基準をクリアした衝撃

3DLab
2026年3月8日
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「家を印刷する」——そんなSFのような話が、いよいよ日本でも現実になりました。2025年11月、宮城県栗原市で日本初となる2階建ての3Dプリンター住宅が完成し、国の建築基準に基づく完了検査に合格。耐震基準をクリアした正規の「住宅」として認められたのです。この記事では、建設3Dプリンターの仕組みから、日本の住宅市場を変えうるポテンシャルまでを解説します。

日本初の2階建て3Dプリンター住宅「Stealth House」とは

2025年11月7日、宮城県栗原市で株式会社築(KIZUKI)と株式会社オノコム(ONOCOM)が手がけた2階建て3Dプリンター住宅「Stealth House(ステルスハウス)」が完成しました。延床面積は約49.92㎡(1階:30.52㎡、2階:19.40㎡)で、1階には浴室と寝室、2階にはキッチンが配置されています。

最大の特徴は、基礎から2階建ての構造体までを現場で一体的に3Dプリントしたこと。従来の3Dプリンター建築は平屋が主流でしたが、このプロジェクトでは地下0.5mから高さ7mまでの印刷を実現し、多層階建築の壁を突破しました。デザインは「洞窟(cave)」をコンセプトにしたアーチ構造で、床スラブや屋根スラブも3Dプリントされた曲線美が印象的です。

COBODの建設3Dプリンターとその技術

このプロジェクトで使われたのは、デンマークに本社を置くCOBOD International社の大型建設3Dプリンターです。COBODは世界で最も多くの建設3Dプリンティング実績を持つメーカーのひとつで、欧州・中東・アジアなど各地でプリンター住宅の施工に採用されています。

建設3Dプリンターは、特殊なモルタル(セメント系材料)をノズルから押し出し、一層ずつ積み重ねて壁や構造体を形成します。Stealth Houseでは合計39㎥もの材料が使用されました。施工は4人のチームで行われ、2025年3月から11月にかけて、気温10℃以下の冬場から35℃の夏場まで、過酷な環境下で進められました。

従来の建築では実現しにくい曲面や複雑な形状を自由に造形できるのが3Dプリンターの強みです。Stealth Houseのアーチ天井や有機的なフォルムは、まさにこの技術の可能性を体現しています。

耐震基準クリアの意義 — なぜ「衝撃」なのか

日本は世界有数の地震大国であり、建築基準法で定められた耐震基準は非常に厳格です。3Dプリンター住宅がこの基準をクリアし、建築確認および完了検査に合格したことは、技術的に大きなブレークスルーです。

これまで3Dプリンター建築は「実験的な構造物」と見なされがちでした。しかし、Stealth Houseは正規の住宅として販売可能な状態にまで到達しています。COBOD社も公式サイトで「Japan's first government approved two-story 3D printed reinforced concrete house(日本政府が初めて承認した2階建て3Dプリント鉄筋コンクリート住宅)」と発表しており、国際的にも注目を集めています。

鉄筋コンクリート(RC)構造と3Dプリント技術を組み合わせた「3DCP×RC」工法により、構造強度と設計の自由度を両立させた点がポイントです。鉄筋は従来工法で配置し、そのまわりを3Dプリンターで打設することで、耐震性能を確保しています。

住宅不足と人手不足——建設3Dプリンターが解決する課題

建設3Dプリンターが注目される背景には、日本の建設業界が直面する深刻な課題があります。国土交通省の統計によると、建設業の就業者数はピーク時(1997年)の約685万人から2024年には約480万人にまで減少。高齢化も進み、55歳以上の就業者が約35%を占める一方、29歳以下は約12%にとどまっています。

3Dプリンター建築は、少人数での施工を可能にします。Stealth Houseの構造体印刷はわずか4人のチームで実現しました。また、セレンディクス株式会社は2人世帯向け3Dプリンター住宅「serendix50」を550万円という低価格で販売するフェーズに入っており、2026年1月には3Dプリント壁のキット販売(330万円)も開始しています。

能登半島地震の被災地にもセレンディクスの住宅が建設されるなど、災害復興住宅としてのニーズも高まっています。工期の大幅短縮と省人化は、人手不足と住宅供給の両方の課題にアプローチできる技術として期待されています。

3Dプリンター住宅の今後 — 普及への道のり

建設3Dプリンターの技術は急速に進化しています。百年住宅株式会社は2025年2月、セレンディクスと協業し、3DプリンターとWPC(プレキャストコンクリート)工法を融合させたハイブリッド建築を静岡県で完成させました。構造はWPC工法で確保しつつ、3Dプリンターで曲線的な意匠を実現する手法で、工期は従来のRC造の約4分の1に短縮されています。

セレンディクスには購入希望が3,000棟を超え、年間500棟規模の建設キャパシティを整備中とのこと。JR西日本の駅舎建て替えにも3Dプリンター技術が導入されるなど、住宅以外への展開も始まっています。

課題としては、対応できるデザインの制約、建築基準法上の手続きの煩雑さ、長期耐久性の実績不足などがあります。しかし、Stealth Houseが2階建てで耐震基準をクリアしたことで、技術的・法的なハードルは確実に下がりつつあります。「3Dプリンターで家を建てる」選択肢が一般的になる日は、そう遠くないかもしれません。

よくある質問

3Dプリンター住宅の価格はどれくらいですか?

セレンディクス社の「serendix50」は約550万円(50㎡・1LDK)で販売されています。また、2026年1月からは3Dプリント壁のキットが330万円で販売開始されており、従来の住宅に比べて大幅に低コストです。Stealth Houseの価格は非公表ですが、技術の普及とともにコスト低減が期待されています。

3Dプリンター住宅は地震に耐えられますか?

2025年11月に完成したStealth Houseは、日本の建築基準法に基づく耐震基準をクリアし、建築確認・完了検査に合格しています。3Dプリントと鉄筋コンクリートを組み合わせた工法により、構造強度を確保しています。

3Dプリンターで家を建てるのにどれくらい時間がかかりますか?

構造体の印刷自体は数日〜数週間で完了しますが、基礎工事・内装・設備工事を含めた全工程では数カ月かかります。セレンディクスの平屋モデルでは施工時間44時間30分という記録もあり、技術の進歩で工期はさらに短縮される見込みです。

建設3Dプリンターではどんな材料を使いますか?

主に特殊配合のモルタル(セメント系材料)が使われます。Stealth Houseではタイの建材メーカーSCG(Siam Cement Group)が開発した3Dプリント用モルタルを日本の気候に合わせて調整したものが採用されました。鉄筋は従来工法で別途配置されます。

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