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3Dプリンターで治具を内製!製造現場のコスト削減と効率化を実現する活用事例集 - 3Dプリンタブログ | 3DLab
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3Dプリンターで治具を内製!製造現場のコスト削減と効率化を実現する活用事例集

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2026年5月12日
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「治具の外注費が高い」「納品まで数週間かかる」「設計変更のたびにやり直し」——製造現場でこうした悩みを抱えていませんか。近年、3Dプリンターを活用して治具を内製化する動きが国内の製造業で急速に広がっています。リコーやナリス化粧品といった大手企業だけでなく、中小製造業でもFDM方式の3Dプリンターを導入し、年間数百万〜1,000万円超のコスト削減を達成した事例が報告されています。本記事では、国内企業の具体的な成功事例と、治具内製化を始めるためのステップを解説します。

なぜ製造現場で3Dプリンター治具が注目されているのか

従来、製造ラインで使われる治具は金属切削加工や射出成形で外注するのが一般的でした。しかし、外注には「1個あたり数万円のコスト」「納品まで2〜3週間」「設計変更時の再発注」といった課題がつきまといます。

3Dプリンターによる治具製作では、CADデータさえあれば最短1日で治具が完成します。材料費は1個あたり数百円〜数千円程度で、設計変更もデータを修正して再出力するだけ。金属加工では実現が難しいハニカム構造による軽量化や、複数部品の一体成形も可能です。

こうしたメリットから、組立治具・検査治具・配膳トレイ・位置決めガイドなど、多品種少量で頻繁に改良が必要な治具ほど、3Dプリンターとの相性が良いとされています。

事例1:ナリス化粧品 — 年間1,030万円のコスト削減を達成

化粧品メーカーのナリス化粧品では、多品種の製品ラインナップに対応するため、製造ラインの治具を数多く必要としていました。従来は外部加工に依頼しており、コストと納期が大きな課題でした。

同社はFDM方式の3Dプリンター「Mark Two」シリーズを導入し、Onyx材料やカーボンファイバーを使った治具の内製化に取り組みました。その結果は以下のとおりです。

  • 充填装置用ホルダー:1個あたり約3万円だった外注費が約2,450円に削減(削減率92%)
  • カートニングマシン用部品:外注比で約1,000万円を削減
  • 年間工数削減効果:約30万円(合計約1,030万円の削減)
  • 投資回収期間:当初3年の予定が、わずか約2カ月で完了
  • 3Dプリンター稼働率:想定50%に対し、実績90%以上

キャッピングマシン用グリッパでは3万7,500個の生産実績があり、製造現場での実用に十分耐える強度が確認されています。

事例2:リコーインダストリー — 組立ミスゼロと生産効率20%向上

リコーインダストリーは、大型商用プリンターの製造拠点です。部品点数が多く、組立作業が複雑化していたことから、配膳ミスや組立ミスが課題でした。

同社はFDM方式のデスクトップ機「Leapfrog Creatr HS」を製造現場に導入し、ABS樹脂で治具を内製しています。主な成果は以下のとおりです。

  • 月間不具合件数:ゼロを達成
  • 消耗品コスト:90%削減
  • 治具の重量:従来の20分の1に軽量化
  • 治具調達納期:3週間から最短1日に短縮
  • 生産効率:20%以上改善
  • 作業スペース:20%削減
  • 作業習熟時間:50%短縮

特に注目すべきは、部品形状に合わせた配膳トレイの製作です。複雑な形状の部品専用にトレイを造形することで、取り間違いを物理的に防止しています。また、色分けしたトルクドライバー用カバーにより、工具の選び間違いも解消しました。

中小製造業でもできるFDM治具製作の始め方

大手企業の事例を見て「うちには難しい」と感じるかもしれませんが、FDM方式の3Dプリンターは10万円台から購入でき、中小製造業でも十分に導入可能です。以下の4ステップで始められます。

ステップ1:課題の洗い出し

まずは製造ラインを観察し、「外注している治具」「繰り返し改良が必要な治具」「破損・消耗が多い治具」をリストアップします。コスト削減効果が見込めるものから優先的に取り組みましょう。

ステップ2:3D CADで設計

Fusion 360(個人・スタートアップ向けは無償)やFreeCADなどの3D CADソフトで治具を設計します。既存の治具を3Dスキャンしてデータ化する方法もあります。設計データはSTL形式で出力します。

ステップ3:スライサーで出力設定

スライサーソフト(Cura、PrusaSlicerなど)でインフィル率や積層ピッチを設定し、Gコードを生成します。治具用途では、インフィル率50〜80%、積層ピッチ0.2mm程度が目安です。

ステップ4:出力と検証

まずはPLA素材でプロトタイプを出力し、現場でフィット感や使い勝手を検証します。問題がなければ、ABS・PETG・ナイロンなど耐久性の高い素材で本番用を製作します。設計に不具合があればCADデータを修正して再出力するだけなので、改善サイクルが圧倒的に速くなります。

治具に適した素材の選び方

FDM方式で治具を製作する場合、用途に応じた素材選定が重要です。製造現場でよく使われる素材を整理します。

  • ABS:耐熱性・耐衝撃性に優れ、治具全般に使いやすい。コストパフォーマンスが高く、製造現場での実績も豊富です。
  • PETG:ABSに近い強度がありながら、反りが少なく出力しやすい素材です。耐薬品性にも優れるため、化学製品を扱う現場に向いています。
  • ナイロン(PA):耐摩耗性が高く、繰り返しの使用に強い素材です。可動部のある治具やスナップフィット構造に適しています。
  • カーボンファイバー強化素材:Onyx(ナイロン+カーボン短繊維)など、金属に近い剛性が必要な治具に使用されます。ナリス化粧品の事例でも採用されています。

まずはABSで試作し、求められる強度や耐熱性に応じて素材をステップアップさせるのが現実的なアプローチです。

よくある質問

3Dプリンターで作った治具は製造現場の使用に耐えられますか?

ABS・ナイロン・カーボンファイバー強化素材を使えば、製造現場での実用に十分な強度があります。ナリス化粧品ではキャッピングマシン用グリッパで3万7,500個以上の生産実績があり、実用性が実証されています。

治具の内製化にはどのくらいの初期投資が必要ですか?

FDM方式の3Dプリンターは10万円台から導入可能です。ナリス化粧品の事例では、当初3年で投資回収する計画が約2カ月で達成されています。外注費の削減額を考えると、投資回収は比較的早い傾向にあります。

3D CADの経験がなくても治具を設計できますか?

Fusion 360などの無償CADソフトは直感的な操作が可能で、既存の治具を参考にシンプルな形状から始めれば、初心者でも設計できます。メーカーやベンダーが提供するトレーニングプログラムを活用するのも有効です。

どのような治具が3Dプリンターでの内製に向いていますか?

位置決めガイド・配膳トレイ・組立補助具・検査治具など、多品種少量で頻繁に改良が必要な治具に向いています。一方、高い寸法精度(±0.05mm以下)が要求されるものや、高温・高荷重環境で使うものは金属加工が適しています。

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