
住友ゴム・ホンダだけじゃない!2026年上半期の3Dプリンター業界ニュースダイジェスト
2026年の上半期は、3Dプリンター業界にとってまさに「加速の半年」でした。大手メーカーによる新素材開発や大型機の発売、AI×3Dモデリングの飛躍、そして日本国内での規制緩和まで——注目ニュースが次々と飛び込んできた半年間を、ダイジェストでお届けします。
MITが電動モーターを丸ごと3Dプリント——材料費わずか50セント
2026年2月、MITの研究チームが学術誌「Virtual and Physical Prototyping」で発表した研究が世界的に注目を集めました。5種類の異なる素材を自動で切り替えながら、完全に機能するリニアモーター(直線運動を生む電動機)を1台のプリンターで丸ごと造形する技術です。
造形にかかる時間は約3時間、材料費はなんと1台あたり約50セント(約80円)。ロボットアームに搭載された4つのツール——フィラメント押出機、ペレット押出機、インク押出機、ヒーター——が印刷中に自動で切り替わり、精密な多素材造形を実現します。完成したモーターは、従来の油圧リニアアクチュエーターを上回る駆動力を発揮しました。
この技術が量産レベルに達すれば、「電気部品を丸ごと印刷する」という新たな製造パラダイムが開かれる可能性があります。
住友ゴム——タイヤ技術を活かした3Dプリンター用ゴム材料を事業化へ
住友ゴム工業(DUNLOP)は、タイヤ開発で培ったゴム配合・解析ノウハウを活かし、3Dプリンター用の高機能ゴム材料を開発しました。2026年11月からUV硬化ゴム「DR-SF45」の国内法人向け限定販売を開始し、2027年末には海外展開も予定しています。
この材料の特徴は圧倒的な耐久性です。独自の圧縮試験で2,000万回もの繰り返し圧縮に耐えることが確認されています。用途としては、人の指先のような滑りにくさが求められるロボットハンドの指先部品や、人の臓器と同等の柔軟性を持つ医療訓練用モデルなどが想定されています。
「3Dプリンター×ゴム」という新ジャンルで、タイヤメーカーが存在感を示す展開に注目です。
ホンダの金属3Dプリンター——絶版パーツの「復活」に光
ホンダは独自開発の金属3Dプリンターを活用し、製造の新領域を切り拓いています。従来品の約10倍の造形速度を持つ自社開発プリンターで、N-BOXのアルミ鋳造金型やF1エンジン部品などに実績を積み上げてきました。
2026年の注目は、NSXをはじめとする旧車向けの「ヘリテージパーツ」プログラムです。金型が残っていないために再生産が困難だった絶版部品を、金属3Dプリンターで復活させる取り組みが2026年4月から始まりました。クラシックカーオーナーにとって待望のニュースです。
Elegoo Jupiter 2——16K・大型光造形が14万円台で登場
2026年4月15日、ELEGOOが大型光造形機「Jupiter 2」の販売を開始しました。14インチ16K LCDスクリーンを搭載し、XY解像度は20×26μm。造形サイズは302×162×300mmと、フィギュアやプロップなど大型造形にも対応します。
特筆すべきは使い勝手の良さ。30℃を自動で保つスマート加熱タンク、2kgレジンボトル対応の自動補充・回収システム、10秒でのフィルム交換機構など、大型機の煩わしさを徹底的に排除した設計です。
日本での定価は140,000円、超早割価格は125,000円(4月28日まで受付)。出荷は2026年第3四半期を予定しています。
Bambu Lab A2L——大型FDM機が6万円台で予約殺到
2026年6月、Bambu Labが大型FDM機「A2L」を発売しました。造形サイズは330×320×325mmと、従来のA1シリーズから大幅にサイズアップ。日本での販売価格は本体64,800円から、AMS Liteセットの「A2L Combo」は84,800円からです。
閉ループ制御のPMSMサーボモーターによる安定した押し出し、サイレントモードではわずか49dBの静音性、そして「ブレードモジュール」を装着すればステッカーやレザーのカッティングマシンにもなるという多機能ぶりが話題を呼びました。
Meshy 6——AIが3Dモデリングの常識を変える
2026年1月18日にリリースされた3D生成AI「Meshy 6」が、3Dモデリングの世界に大きなインパクトを与えました。テキストや画像から約1分で3Dモデルを生成でき、全世界で300万人以上が利用しています。
バージョン6の目玉は3つ。まず、ジオメトリの構造が大幅に改善され、キャラクターや有機的なモデルの手作業修正が大幅に減りました。次に、ハードサーフェスモデルのエッジがシャープに表現されるようになり、メカやプロダクトデザインへの実用性が向上。そして、マルチカラー3Dプリント対応として、FDM 3Dプリンターと互換性のある3MFフォーマットでの出力に対応しました。
「AIで作って、そのまま3Dプリント」という流れが、いよいよ現実的なワークフローになりつつあります。
Stratasys、Markforgedを約42.5億円で買収——業界再編が加速
2026年5月27日、3Dプリンター大手のStratasysが、金属・複合材料3DプリンターメーカーのMarkforgedを4,250万ドル(約63億円)で買収すると発表しました。Markforgedは航空宇宙・防衛分野に強みを持つFFF(熱溶解積層)方式のリーダー企業です。
2025年に業界では複数の買収が続きましたが、2026年に入ってもこの流れは止まりません。Stratasysにとっては、航空宇宙・防衛分野での生産能力拡充が目的です。統合は2026年後半の完了を予定しています。
建設3Dプリンターに規制緩和の追い風——2026年度は転換点
国土交通省が建設3Dプリンター向けの建築材料に関する規制緩和に動いています。200㎡以下の平屋の小規模建築物について、従来必要だった「20条認定」を不要とする仕様規定の策定が進行中です。2026年3月にパブコメ案が公表され、5月以降の施行を目指しています。
すでにKizuki社が2階建て住宅を、セレンディクス社が平屋住宅を完成させるなど、技術面では実績が蓄積されてきました。規制のハードルが下がることで、3Dプリンター住宅の社会実装が一気に進む可能性があります。
ただし、人材不足や屋外施工時の品質管理、初期投資コストなどの課題は残っており、規制緩和だけで一気に普及するわけではない点にも留意が必要です。
よくある質問
2026年上半期の3Dプリンター業界で最も大きなニュースは何ですか?
技術面ではMITの電動モーター丸ごと3Dプリントが注目を集め、製品面ではElegoo Jupiter 2やBambu Lab A2Lの発売、業界再編ではStratasysによるMarkforged買収が大きなトピックでした。日本国内では建設3Dプリンターの規制緩和が今後に大きな影響を与える動きです。
Meshy 6で生成した3Dモデルはそのまま3Dプリントできますか?
はい、Meshy 6はSTLやOBJ、3MFなど主要なフォーマットでの出力に対応しています。特にマルチカラー3Dプリント向けの3MF出力が新たに追加され、FDMプリンターでカラフルなモデルを造形できるようになりました。
建設3Dプリンターの規制緩和で何が変わりますか?
200㎡以下の平屋建築物について、国土交通省の個別認定(20条認定)なしで建設できる仕様規定が整備される予定です。これにより、建設3Dプリンター住宅のコストと手続き負担が大幅に軽減される見込みです。
住友ゴムの3Dプリンター用ゴム材料はいつ購入できますか?
UV硬化ゴム「DR-SF45」は2026年11月から国内法人向けに限定販売が開始される予定です。個人向けの販売時期は未定ですが、2027年末には海外展開も計画されています。
参考リンク
- 3D-printing platform rapidly produces complex electric machines — MIT News
- ELEGOO「Jupiter 2」発売——14インチ16K・302×162×300mm造形 — FabScene
- 3D生成AIモデル「Meshy-6」リリース! — CGWORLD
- 国交省が建設3Dプリンター向けの材料で規制緩和へ — 日経クロステック
- 住友ゴム工業、3Dプリンタ用高機能ゴムを本格事業化 — ゴム報知新聞NEXT
- Stratasys to Acquire MarkForged, Inc. — Stratasys IR
- Bambu Lab A2L — Bambu Lab公式



