
3Dプリンターでメガネフレームを自作する方法|顔にフィットするカスタムアイウェアDIY
自分の顔にぴったり合うメガネが欲しい。既製品ではテンプルが耳の後ろで浮いたり、鼻パッドの位置がしっくりこなかったりして、妥協してかけている方も多いのではないでしょうか。3Dプリンターを使えば、顔の形に合わせたメガネフレームを自宅で設計・造形できます。この記事では、顔の3Dスキャンから設計、素材ごとの仕上がり比較、ヒンジ(蝶番)の組み込み方まで、カスタムアイウェアDIYの手順を紹介します。
まず知っておきたい:3Dプリンターで作れる範囲
3Dプリンターで作れるのは「フレーム部分」です。度付きレンズはメガネ店で加工してもらう必要があるため、フレームだけを自作し、レンズ加工は専門店へ依頼するのが現実的な進め方でしょう。伊達メガネやブルーライトカットのフラットレンズであれば、フレームに合うサイズのレンズをオンラインショップで購入し、自分ではめ込むこともできます。
造形方式はFDM(熱溶解積層)とSLA/LCD(光造形)のどちらにも対応しています。ただし方式によって使える素材と仕上がりが大きく異なるため、次のセクションで違いを見ていきましょう。
顔の3Dスキャンとフレーム設計の手順
フィットするメガネを作るには、自分の顔のサイズを正確に把握するところから始めましょう。手作業でメジャー計測する方法もありますが、iPad Pro(LiDARセンサー搭載モデル)やiPhone 15 Pro以降の端末があれば、3Dスキャンアプリで顔の形状データを取得できます。「Polycam」や「Scaniverse」といった無料アプリが手軽です。
スキャンしたデータを参考に、以下の寸法を決定します。
- レンズ幅(片目あたり):45〜55mm程度
- ブリッジ幅(左右レンズ間):16〜22mm程度
- テンプル長(つるの長さ):130〜150mm程度
- 鼻パッド位置と角度
設計にはBlenderやFusion 360といった3D CADソフトを使います。Thingiverseなどのモデル共有サイトにはメガネフレームのテンプレートが公開されているので、ゼロから設計する自信がなければ、テンプレートを自分の寸法に合わせて修正するのが効率的です。リム(レンズをはめる溝)の幅は使用するレンズの厚みに合わせて設計してください。溝幅は1.5〜2.0mmが一般的な目安です。
素材別の仕上がり比較:ナイロン・PETG・レジン
メガネフレームに使われる代表的な3Dプリンター用素材は、ナイロン(PA12/PA11)、PETG、レジンの3種類です。それぞれ特性が異なるため、求める仕上がりに応じて選ぶとよいでしょう。
| 素材 | 造形方式 | 重量目安 | 仕上がり | 注意点 |
|---|---|---|---|---|
| ナイロン(PA12) | SLS / FDM | 15〜20g | 軽量で丈夫。しなりがあり掛け心地に優れる | FDMでは反りやすく、エンクロージャー付きプリンターが望ましい |
| PETG | FDM | 20〜28g | 適度な強度と柔軟性。PLAより耐久性が高い | 糸引きが出やすいため、リトラクション設定の調整が必要 |
| レジン | SLA / LCD | 18〜25g | 表面が滑らかで仕上がりが美しい。細部の再現性が高い | 硬くてしなりが少なく、落とすと割れやすい。UV硬化後の後処理が必要 |
日常使いの実用性を重視するなら、ナイロンかPETGが向いています。ナイロンはSLS方式の外注サービス(DMM.makeやShapewaysなど)を利用すると、家庭用FDMプリンターでは難しい均一な仕上がりが得られるでしょう。見た目の美しさを優先したい場合や、短期間のイベント用であればレジン造形も選択肢に入ります。
ヒンジ(蝶番)の設計と組み込み方
テンプル(つる)を折りたためるようにするには、ヒンジ機構が欠かせません。3Dプリンターでメガネを作るとき、ヒンジの設計が最も難しい工程でしょう。代表的なアプローチは3つあります。
1つ目は、市販のメガネ用蝶番を埋め込む方法です。メガネ修理用のパーツとして幅7mmほどの蝶番がオンラインで手に入ります。フレーム側にパーツを差し込むスロットを設計し、接着剤で固定してください。金属製の蝶番なので耐久性が高く、開閉のクリック感も得られます。
2つ目は、フィラメントを軸にしたプリントインプレース・ヒンジです。ピンとなる円柱と受け穴をCAD上で0.3〜0.4mmの隙間(クリアランス)を設けて設計し、一体で造形します。追加パーツが不要な一方、何百回もの開閉には耐えにくく、プロトタイプや短期使用向けでしょう。
3つ目は、素材のしなりを利用するリビングヒンジです。テンプルの付け根部分の肉厚を0.4〜0.8mm程度に薄くし、折り曲げられるようにします。TPUやナイロンなど柔軟な素材との相性がよい方法ですが、繰り返しの曲げで破断するおそれがあるため、肉厚と素材の組み合わせを事前にテストしてください。
どの方法を選ぶ場合も、ヒンジ周辺の肉厚は最低2mm以上を確保し、造形方向はヒンジの回転軸がZ軸と平行になるよう配置すると、層間剥離による破損を防ぎやすくなります。
仕上げと調整のポイント
造形後のフレームには積層痕が残っています。FDM造形品は240〜400番のサンドペーパーで段階的に研磨し、表面を滑らかにしましょう。レジン造形品はIPAで洗浄後、UV追加硬化を行ってから研磨してください。
肌に触れる部分(鼻パッドやテンプルの耳かけ)は、研磨のあとにクリアコートスプレーを薄く塗ると、肌触りが良くなるだけでなく汗や皮脂による劣化も抑えられます。色を変えたい場合は、プライマーを塗ったうえでアクリル塗料を重ね、クリアコートで仕上げてください。
装着テストでは、テンプルの開き角度と鼻パッドの当たり具合を確認しましょう。きつければドライヤーの温風(PETGで約70〜80℃)で軽く温めると微調整できます。ナイロン素材はお湯(約60〜70℃)に数秒浸けてから曲げると形を変えられるので、何度か試着と調整を繰り返すことで、既製品では得られないフィット感に仕上がるはずです。
よくある質問
3Dプリンターで作ったメガネに度付きレンズは入れられますか?
フレームのリム溝を度付きレンズの厚みに合わせて設計すれば入れられます。レンズの加工と取り付けはメガネ店に依頼するのが確実です。
家庭用FDMプリンターでもメガネフレームは作れますか?
PETGやPLAを使えば家庭用FDMプリンターでも造形できます。ただし積層痕が目立つため、研磨や塗装による仕上げ処理が必要です。
3Dプリント製のメガネフレームはどのくらい耐久性がありますか?
素材と設計によります。ナイロン(PA12)製フレームは市販品に近い強度があり、日常使いにも耐えます。PETGは落下時の衝撃にやや弱いため、扱いに注意が必要です。
顔の3Dスキャンなしでもカスタムフレームは作れますか?
メジャーで顔幅・鼻幅・テンプル長を計測し、その数値をもとにCADで設計すれば作れます。ただしフィット感の精度は3Dスキャンに比べると劣ります。
参考リンク
- オリジナルメガネフレームの製作|3Dスキャンと3Dプリント技術を活用して作る新しいデザインの試み(モノサーカスアトリエ)
- How to Design 3D Printed Glasses(Instructables)
- 3D Printed Glasses: Trends in the eyewear industry(Sculpteo)
- メガネをユーザーに合わせて作成! 3Dプリンターでつくるメガネとは(3D Modely)



