
3Dプリンターで始める電子工作入門 — Arduino・ラズパイ用ケースからロボットアームまで
「3Dプリンターを買ったけど、フィギュアやスマホスタンド以外に何を作ればいいんだろう?」という方に試してほしいのが、ArduinoやRaspberry Piと組み合わせた電子工作です。3Dプリンターで基板のケースや筐体を自作すれば、見た目も機能も自分好みのガジェットを作れます。この記事では、初心者でも始めやすいケース作りから本格的なロボットアームまで、段階を追ってプロジェクト例を紹介します。
なぜ3Dプリンター×電子工作が相性抜群なのか
電子工作では、基板やセンサーを固定するケースやマウントが必要です。市販のケースはサイズが合わなかったり、センサー用の穴がなかったりと、痒いところに手が届かないことがよくあります。3Dプリンターがあれば、基板のネジ穴の位置、USBポートの開口部、センサーの取り付け角度まで、すべてミリ単位で設計できます。
しかも、設計を間違えてもフィラメント数十円分で何度でもやり直せるのが3Dプリンターの強みです。試作と改良をすばやく繰り返せるので、電子工作との組み合わせは、まさに「最強のものづくり環境」と言えます。
ステップ1:Arduino・ラズパイ用ケースを作ってみよう
電子工作×3Dプリンターの第一歩には、マイコンボード用のケース作りがおすすめです。Arduino UnoやRaspberry Piの基板寸法は公式サイトで公開されているので、3D CADソフト(TinkerCAD、Fusion 360など)で正確にモデリングできます。
基本的な設計のポイントは次のとおりです。
- 基板の固定:ネジ穴の位置に合わせたボス(突起)を設計し、M2.5やM3ネジで固定
- ポートの開口:USB-C、HDMI、GPIO端子などの位置に合わせて穴を開ける
- 放熱対策:とくにRaspberry Pi 5は発熱が大きいため、スリットやファン取り付け穴を設ける
- 蓋の固定方式:スナップフィット(はめ込み式)かネジ止めかを選ぶ
ThingiverseやCults3Dなどの3Dデータ共有サイトでは、Arduino・Raspberry Pi用ケースのSTLファイルがたくさん公開されています。まずは既存のデータをダウンロードして印刷し、必要に応じてカスタマイズすると手間がかかりません。
ステップ2:センサー+ケースで実用ガジェットを作る
ケース作りに慣れたら、次はセンサーを組み合わせた実用的なガジェットに挑戦しましょう。初心者にも取り組みやすいプロジェクト例を紹介します。
温湿度モニター
DHT22センサーとArduino Nano、小型のOLEDディスプレイを組み合わせた温湿度計です。センサー用の通気口が付いたケースを3Dプリンターで作れば、見た目もスッキリしたデスク用ガジェットになります。部品代は1,500〜2,000円程度で、はんだ付けの練習にも向いています。
スマートプランター(自動水やり装置)
土壌湿度センサーとポンプをArduinoで制御し、土が乾いたら自動で水をやる仕組みです。ポンプやチューブを固定するマウントや、センサーを土に挿すためのホルダーなど、3Dプリンターで作る部品が多いプロジェクトです。
回転数測定器
フォトリフレクターとArduinoを使えば、モーターやファンの回転数を測る装置も作れます。センサーとディスプレイを一体にしたケースを3Dプリンターで作ると、持ち運びやすい計測器になります。
ステップ3:ロボットアームに挑戦
3Dプリンター×電子工作の醍醐味を味わえるのが、ロボットアームの自作です。関節部分のフレーム、グリッパー(つかむ部分)、サーボモーターの固定具まで、すべて3Dプリンターで作れます。
基本的な構成は次のとおりです。
- 制御基板:Arduino Mega 2560またはArduino Uno
- 駆動部:SG90やMG996Rなどのサーボモーター(3〜6個)
- フレーム:PLAまたはPETGフィラメントで印刷(PETGのほうが耐久性が高い)
- 操作方法:ポテンショメーター(可変抵抗器)でリーダーアームを作り、その動きにロボットアームを追従させる方式がよく使われる
メタエレ実験室やburariweb.infoなどの技術ブログでは、3軸〜6軸のロボットアームの作り方が詳しく解説されていて、STLデータを無料で公開している例もあります。書籍では『「Arduino」と「3D プリンタ」でロボットを作ろう』(工学社)が体系的にまとまっており、初めてのロボット製作に向いています。
ステップ4:IoT・ネットワーク連携で広がる可能性
Raspberry Piを使えば、Wi-FiやBluetoothを使ったIoT(モノのインターネット)のプロジェクトにも広げられます。
遠隔モニタリングステーション
Raspberry PiにBME280(温度・湿度・気圧センサー)をつなぎ、データをクラウドに送ります。3Dプリンターで防水ケースを作れば、屋外に置ける気象観測ステーションになります。
スマートホームコントローラー
Raspberry PiでHome Assistantを動かし、赤外線LEDモジュールを組み合わせれば、エアコンやテレビを操作するスマートリモコンが作れます。壁掛けケースやタッチパネル用のスタンドを3Dプリンターで作れば、部屋のインテリアにもなじみます。
四足歩行ロボット
サーボモーター12個とArduinoを組み合わせた四足歩行ロボットも、3Dプリンターがあればフレームを自作できます。歩行パターンのプログラミングまで含めれば、本格的なロボティクスの入門です。
3Dプリンターで電子工作を始めるために揃えたい道具
電子工作を始めるときに、3Dプリンターのほかに必要な基本の道具をまとめました。
- はんだごて:温度調節機能付きのものが使いやすい(白光 FX600など)
- ブレッドボード:はんだ付けなしで回路を試作できる
- ジャンパーワイヤー:オス-オス、オス-メスの両方を用意
- テスター(マルチメーター):電圧・抵抗の確認に必須
- ノギス:基板やパーツの寸法を正確に測る(3Dモデリングに必要)
- 3D CADソフト:TinkerCAD(無料・ブラウザベース)またはFusion 360(個人利用無料)
マイコンボードは、Arduino Uno(約3,000円〜)かArduino互換ボード(約500円〜)から始めるのがおすすめです。Raspberry Piなら最新のRaspberry Pi 5(約10,000円〜)のほか、小型のRaspberry Pi Zero 2 W(約2,500円〜)もIoT用途で人気があります。
よくある質問
電子工作が初めてでも3Dプリンターと組み合わせたプロジェクトはできますか?
はい。Arduino用ケースの作成のような簡単なプロジェクトから始められます。Arduinoの公式チュートリアルや無料のSTLデータを使えば、はんだ付けの要らないブレッドボード工作から、少しずつステップアップしていけます。
電子工作のケース作りにおすすめのフィラメントは何ですか?
一般的なケースなら、扱いやすいPLAがおすすめです。発熱する部品(Raspberry Piなど)のケースにはPETGが向いています。耐熱性が必要ならABSも選択肢に入りますが、印刷は難しくなります。
ArduinoとRaspberry Piのどちらから始めるべきですか?
LEDの点灯やセンサーの読み取りなど、シンプルな制御から始めるならArduinoが向いています。Wi-Fi接続やカメラ、Webサーバーなど高度な処理が必要な場合は、Raspberry Piが適しています。どちらも3Dプリンターとの相性は抜群です。
3Dプリンターで作ったケースにネジ穴を設計するコツはありますか?
FDM方式では、穴を設計値より0.2〜0.3mm程度大きくしておくのがコツです。M3ネジを使うなら、穴径を3.2〜3.3mmにするとネジがスムーズに入ります。インサートナット(熱圧入式)を使えば、何度着脱しても傷みにくくなります。
参考リンク
- Arduino 公式サイト — Arduino Foundation
- Raspberry Pi 公式サイト — Raspberry Pi Ltd
- 3Dプリンターで作るロボットアーム作成計画 — メタエレ実験室
- 3Dプリントパーツで作るロボットアームに挑戦 — ぶらりweb
- TinkerCAD — Autodesk(無料3D CADソフト)



