
スマホだけで3Dスキャン|無料アプリ比較とスキャンデータを3Dプリントする方法
「身の回りのモノを3Dデータにできたら面白いのに」——そんな願いを、いまやスマホ1台で実現できる時代になりました。LiDARセンサーやフォトグラメトリ技術の進化により、無料アプリでも驚くほど高精度な3Dスキャンが可能です。この記事では、代表的なスマホ3Dスキャンアプリ3つを比較し、スキャンしたデータをSTLに変換して3Dプリンターで出力するまでの手順を初心者向けに解説します。
スマホ3Dスキャンの仕組み——LiDARとフォトグラメトリ
スマホで3Dスキャンを行う方法は、大きく2つあります。1つはLiDARスキャンで、iPhone 12 Pro以降やiPad Proに搭載されたLiDARセンサーがレーザー光で空間の奥行きを計測し、リアルタイムに3Dメッシュを生成します。もう1つはフォトグラメトリで、対象物をさまざまな角度から撮影した複数枚の写真をもとにAIが3Dモデルを構築する手法です。フォトグラメトリはLiDAR非搭載のスマホでも利用できるため、Android端末でも3Dスキャンが可能です。
最近のアプリでは、これらに加えて3D Gaussian Splattingと呼ばれる新しい技術も登場しています。従来のメッシュ(ポリゴン)表現と異なり、点群をぼかして重ね合わせることでフォトリアルな見た目を実現する手法です。見た目重視の用途には向いていますが、3Dプリントにはメッシュ(STL)への変換が必要になります。
無料3Dスキャンアプリ3選を比較
ここでは、スマホ3Dスキャンの定番アプリ3つを比較します。それぞれ特徴が異なるので、目的に合ったものを選びましょう。
Scaniverse(スキャニバース)
Niantic Spatial社(旧Niantic Labs)が提供する完全無料の3Dスキャンアプリです。iOS・Android両対応で、無料プランでもスキャン回数が無制限なのが大きな魅力です。LiDARスキャン、フォトグラメトリ、Gaussian Splattingの3モードを搭載しており、OBJ・FBX・GLB・USDZ・STL・PLYなど主要な3Dフォーマットに無料でエクスポートできます。処理はすべて端末上で完結するため、クラウドにデータを送る必要がなくプライバシー面でも安心です。
対応OS:iOS / Android(7.0以上)
料金:無料(Classic)。Plus(月額約20ドル)やPro(月額約50ドル)のクラウド処理プランもあり
エクスポート:OBJ, FBX, GLB, USDZ, STL, PLY, LAS(無料で利用可能)
Polycam(ポリキャム)
Polycam Inc.が開発する高機能3Dスキャンアプリです。LiDARスキャン・フォトグラメトリ・Gaussian Splattingの3つのキャプチャモードを搭載し、800万人以上のユーザーに利用されています。LiDAR非搭載のiPhoneでもフォトグラメトリで3Dスキャンが可能です。無料版でもスキャンと基本的なエクスポート(GLTF形式)ができますが、STL・OBJ・FBXなどの形式でエクスポートするにはPro版(月額約26.99ドル)が必要です。3Dフロアプラン生成機能も備えており、建築・不動産分野でも活用されています。
対応OS:iOS / Android
料金:無料(GLTF形式のみ)。Proは月額約26.99ドル
エクスポート:無料版はGLTFのみ、Pro版はOBJ, FBX, STL, PLY, E57など
Qlone(クローン)
EyeCue Vision Technologies社が提供する3Dスキャンアプリで、累計200万ダウンロードを超える実績があります。最大の特徴は専用ARマットを使うスキャン方式です。チェッカーボード柄のマットを印刷し、その上にスキャンしたい物体を置いて360度撮影します。マットが位置基準となるため、LiDAR非搭載のスマホでも安定した精度が得られます。ただし、マットのサイズに収まる小物に限られるため、大きな物体や空間のスキャンには不向きです。
対応OS:iOS / Android
料金:スキャン無料。エクスポートは形式ごとの課金あり
エクスポート:STL, OBJ, PLY, X3D, FBXなど(課金が必要な形式あり)
3アプリ比較まとめ
| 項目 | Scaniverse | Polycam | Qlone |
|---|---|---|---|
| 対応OS | iOS / Android | iOS / Android | iOS / Android |
| LiDAR対応 | ○ | ○ | ×(ARマット方式) |
| フォトグラメトリ | ○ | ○ | ○ |
| 無料でSTLエクスポート | ○ | ×(Pro版のみ) | △(課金が必要) |
| スキャン対象 | 小物〜空間 | 小物〜空間 | 小物のみ |
| おすすめユーザー | 無料で完結させたい人 | 高機能・業務利用 | 小物を手軽にスキャンしたい人 |
きれいにスキャンするための5つのコツ
アプリの性能だけでなく、撮影時のちょっとした工夫でスキャン品質は大きく変わります。以下の5つのポイントを意識してみてください。
1. 明るい場所で撮影する
フォトグラメトリは写真の画質が精度に直結します。自然光が入る場所や、照明を十分に確保した環境で撮影しましょう。影が強すぎると色ムラの原因になります。
2. ゆっくり一定の速度で動く
スマホを急に動かすとブレが生じ、メッシュが崩れる原因になります。対象物の周りをゆっくり、一定の距離を保ちながら移動してください。
3. さまざまな角度から撮影する
水平方向だけでなく、上からや斜め下からなど多角度で撮影すると、死角が減って穴のないモデルになります。
4. 反射・透明な素材を避ける
ガラス、鏡、光沢の強い金属はLiDARもフォトグラメトリも苦手です。どうしてもスキャンしたい場合は、マスキングテープやベビーパウダーで表面の反射を抑える方法があります。
5. 背景をシンプルにする
ごちゃごちゃした背景があると、対象物と背景の区別がつきにくくなります。無地の布や紙を敷くだけで精度が向上します。
スキャンデータをSTLに変換して3Dプリントする手順
3Dスキャンしたデータをそのまま3Dプリンターに送っても、うまく出力できないことがほとんどです。スキャンデータの修正と変換が必要になります。ここでは、Scaniverseでスキャンしたデータを3Dプリントするまでの流れを紹介します。
ステップ1:スキャンデータをエクスポートする
Scaniverseの場合、スキャン完了後に共有ボタンからSTL形式を選んでエクスポートします。ファイルはAirDrop、メール、クラウドストレージ(Google Drive、iCloud等)でPCに転送できます。Polycam(Pro版)やQloneも同様にSTL形式でのエクスポートに対応しています。
ステップ2:メッシュを修復・編集する
スキャンデータには穴(非多様体メッシュ)や不要な部分が含まれていることが多いです。以下の無料ソフトで修正できます。
- Meshmixer(Autodesk製・無料):穴の自動修復、不要部分の削除、スムージングが直感的に行えます
- 3D Builder(Windows標準搭載):STLファイルを読み込むだけで自動修復してくれる手軽さが魅力です
- Blender(オープンソース・無料):高機能な3Dモデリングソフト。メッシュ編集の自由度が高い反面、操作の学習コストはやや高めです
修復のポイントは、「穴をふさぐ」「不要な面を削除する」「底面を平らにする」の3つです。特に底面が平らでないと、プリント時に安定しません。
ステップ3:スライサーソフトで印刷設定をする
修復したSTLファイルをスライサーソフトで開き、3Dプリンター用のGコード(機械語)に変換します。代表的なスライサーソフトは以下のとおりです。
- UltiMaker Cura:多くのFDM機に対応する定番スライサー
- PrusaSlicer:Prusa機だけでなく汎用的に使える高機能スライサー
- Bambu Studio:Bambu Lab製プリンター向けの使いやすいスライサー
スライサーでは、モデルのサイズ調整、配置の向き、積層ピッチ(レイヤー高さ)、インフィル(内部充填率)などを設定します。スキャンデータは細かいディテールが多いため、積層ピッチは0.1〜0.15mmに設定するときれいに仕上がります。
ステップ4:3Dプリンターで出力する
設定が済んだらGコードをプリンターに転送し、出力を開始します。スキャンデータは形状が複雑なことが多いため、サポート材の設定を忘れないようにしましょう。出力後はサポート材を丁寧に除去し、必要に応じてヤスリがけや塗装で仕上げます。
よくある質問
LiDARがないスマホでも3Dスキャンできますか?
はい、可能です。Scaniverse・Polycam・Qloneのいずれもフォトグラメトリに対応しており、LiDAR非搭載のiPhoneやAndroid端末でも3Dスキャンができます。ただし、LiDARありの場合と比べるとスキャン速度や暗所での精度に差が出ることがあります。
完全無料でSTLエクスポートまでできるアプリはどれですか?
Scaniverseが、無料プラン(Classic)でSTLを含む主要フォーマットへのエクスポートに対応しています。Polycamは無料版ではGLTF形式のみ、QloneはSTLエクスポートに課金が必要です。無料で完結させたい場合はScaniverseがおすすめです。
スキャンしたデータをそのまま3Dプリントできますか?
多くの場合、そのままでは出力がうまくいきません。スキャンデータには穴や不要な面が含まれることが多いため、MeshmixerやBlenderなどの無料ソフトでメッシュの修復を行い、底面を平らに整えてからスライサーに読み込む手順を踏むことをおすすめします。
人物の3Dスキャンはスマホでもできますか?
可能ですが、静止が必要です。人体は動きやすいため、できるだけ動かずにポーズを保ってもらい、素早く周囲を撮影します。ScaniverseのフォトグラメトリモードやPolycamのLiDARモードが比較的得意ですが、業務用スキャナーほどの精度は期待できません。
参考リンク
- Scaniverse 公式サイト — Niantic Spatial, Inc.
- Polycam - App Store — Apple
- Qlone 公式サイト — EyeCue Vision Technologies
- Top 3D Scanning Apps for Android and iPhone in 2026 — 3DMakerpro
- 3Dスキャンしたフィギュアを3Dプリンターで出力するまでの流れ — FLASHFORGE



