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Klipperファームウェア入門|旧型3Dプリンターを高速化する導入手順と設定のコツ - 3Dプリンタブログ | 3DLab
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Klipperファームウェア入門|旧型3Dプリンターを高速化する導入手順と設定のコツ

3DLab
2026年8月22日
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「今使っている3Dプリンターの印刷速度が遅い」「もっときれいな仕上がりにしたい」——そんな悩みを抱えている方に注目されているのが、Klipper(クリッパー)というオープンソースのファームウェアです。Raspberry Piなどのシングルボードコンピュータと組み合わせることで、既存のFDM 3Dプリンターの性能を大きく引き上げることができます。本記事では、Klipperの仕組みから導入手順、設定のポイント、よくあるトラブルの対処法までを体系的に解説します。

Klipperとは?——従来ファームウェアとの違い

多くのFDM 3DプリンターにはMarlinというファームウェアが搭載されています。Marlinではプリンター本体のマイコン(MCU)がすべての計算処理を担当しますが、8ビット・32ビットMCUの処理能力には限界があり、高速な動きを指示すると計算が追いつかず精度が低下することがあります。

Klipperは、この計算処理を外部のLinuxコンピュータ(ホスト)に分散させるアーキテクチャを採用しています。プリンター側のMCUはモーター駆動やセンサー読み取りといった低レベル制御に専念し、運動計画や高度な補正計算はRaspberry Piなどの高性能なホストが処理します。この分散処理により、以下のメリットが得られます。

  • 印刷速度の向上:高速な運動計画が可能になり、同じプリンターでも印刷速度を大幅に引き上げられる
  • 印刷品質の改善:Input Shaper(振動補正)やPressure Advance(圧力補正)といった高度な制御機能が使える
  • 柔軟な設定変更:設定ファイル(printer.cfg)を編集するだけで、ファームウェアの再コンパイルなしにパラメータを変更できる
  • マルチプリンター管理:1台のRaspberry Piで複数のプリンターを制御できる

導入に必要なハードウェアと準備

Klipperを導入するにあたって、以下のハードウェアを用意しましょう。

必須アイテム

  • Raspberry Pi 4(2GB以上推奨):ホストコンピュータとして使用します。Raspberry Pi 3でも動作しますが、Webインターフェースの操作感を考えると4以降がおすすめです
  • microSDカード(16GB以上):Raspberry Pi OSまたはMainsailOS / FluiddPiをインストールします
  • USBケーブル:Raspberry Piとプリンター本体を接続します(多くの場合USB-A to USB-Bまたはmicro USB)
  • 安定した電源:Raspberry Pi用の5V/3A電源アダプター

あると便利なもの

  • ADXL345加速度センサー:Input Shaperの自動キャリブレーションに使用します。1個500〜1,000円程度で入手可能です
  • 有線LANケーブル:初期セットアップ時はWi-Fiより安定します

対応プリンターの確認

Klipperは、Ender-3シリーズ、CR-10、Prusa i3 MK3、Voronなど、多くのFDMプリンターに対応しています。公式リポジトリのconfig/ディレクトリに「printer-」で始まるサンプル設定ファイルが用意されているので、自分のプリンターが対応しているか事前に確認しておきましょう。

Klipperの導入手順

ここでは、もっとも一般的な導入方法を順を追って説明します。

ステップ1:ホストOSのインストール

Raspberry PiにKIAUH(Klipper Installation And Update Helper)を使う方法が現在の主流です。まずRaspberry Pi OSをインストールし、SSH接続できる状態にします。その後、以下のコマンドでKIAUHを導入します。

sudo apt update && sudo apt upgrade -y
git clone https://github.com/dw-0/kiauh.git
cd kiauh && ./kiauh.sh

KIAUHのメニューからKlipper本体、Webインターフェース(MainsailまたはFluidd)、Moonraker(APIサーバー)を順にインストールします。

ステップ2:MCUファームウェアの書き込み

プリンター本体のMCUにKlipper用ファームウェアを書き込みます。KIAUHまたは手動でmake menuconfigを実行し、プリンターのMCUチップ(例:STM32F103、ATmega2560など)に合わせた設定を行います。

cd ~/klipper
make menuconfig
make
make flash FLASH_DEVICE=/dev/ttyUSB0

USB接続でフラッシュできない場合は、生成されたklipper.binファイルをSDカードに書き込んでプリンター側で読み込ませる方法もあります。

ステップ3:printer.cfgの初期設定

Klipperの心臓部ともいえるのがprinter.cfgという設定ファイルです。Klipperの公式リポジトリにある機種別サンプルファイルをベースに、自分のプリンターに合わせて編集します。MainsailやFluiddのWebエディタから直接編集できるので便利です。

主な設定セクションは以下のとおりです。

  • [mcu]:プリンターのMCUとの通信設定(シリアルポートの指定)
  • [stepper_x] / [stepper_y] / [stepper_z]:各軸のステッピングモーター設定(ステップ数、方向、エンドストップ位置など)
  • [extruder]:エクストルーダーの設定(ステップ数、ノズル最高温度、PID制御パラメータ)
  • [heater_bed]:ヒートベッドの温度制御設定
  • [printer]:最大速度・加速度・角速度の上限値

設定ファイルを保存してRESTARTコマンドを実行すれば、Klipperが起動します。エラーが出た場合はログを確認し、ピン番号やパラメータを修正します。

高速化・高精度化のための調整テクニック

Klipperを導入しただけでも性能向上は実感できますが、以下の機能を適切にチューニングすることで、さらに大きな効果が得られます。

Input Shaper(振動補正)

高速印刷時に発生するゴースティング(縞模様のような造形不良)を抑制する機能です。プリンターの共振周波数を測定し、その振動を打ち消す制御信号を生成します。

ADXL345加速度センサーをプリントヘッドに取り付け、SHAPER_CALIBRATEコマンドを実行すると、自動的に最適なシェイパータイプ(MZV、EI、ZVなど)と周波数が算出されます。これをprinter.cfgに反映します。

[input_shaper]
shaper_freq_x: 48.2
shaper_freq_y: 36.8
shaper_type: mzv

Pressure Advance(圧力補正)

フィラメントの押し出し遅延を補正する機能です。コーナー部分のダマや糸引きを軽減し、よりシャープな造形が可能になります。

注意点として、Input Shaperを先にキャリブレーションしてからPressure Advanceを調整してください。Input Shaperが加速度プロファイルを変更するため、順序を逆にすると最適値がずれます。

printer.cfgの[extruder]セクションに以下のように記述します。初期値0.05程度から始め、テストプリントで最適値を探ります。

[extruder]
pressure_advance: 0.05
pressure_advance_smooth_time: 0.040

PID温度チューニング

ノズルやベッドの温度制御を最適化するPIDチューニングも重要です。Klipperでは以下のGコマンドで自動チューニングできます。

PID_CALIBRATE HEATER=extruder TARGET=210
PID_CALIBRATE HEATER=heater_bed TARGET=60

よくあるトラブルと対処法

Klipper導入時に遭遇しやすいトラブルと、その解決策をまとめます。

MCUに接続できない

ls /dev/ttyUSB*ls /dev/serial/by-id/*でデバイスが表示されるか確認します。表示されない場合はUSBケーブルの不良(充電専用ケーブルではデータ通信できません)や、MCUファームウェアの書き込み失敗が考えられます。

モーターが動かない・逆方向に動く

printer.cfgのステッパー設定でdir_pinのピン番号や極性(!で反転)を確認してください。サンプル設定ファイルのピン番号が自分のボードと一致しているかも要チェックです。

温度センサーの読み取りエラー

センサータイプの指定ミスが多い原因です。sensor_typeを正しく設定してください。一般的なCreality系プリンターではEPCOS 100K B57560G104Fがよく使われます。

印刷中にタイマー遅延エラーが出る

「Timer too close」エラーはMCUとホスト間の通信遅延が原因です。USBケーブルの品質確認、Raspberry PiのCPU負荷軽減(不要なサービスの停止)、USBハブを介さない直接接続を試してください。

よくある質問

KlipperとMarlinはどちらが初心者向きですか?

Marlinのほうが情報量が多く初心者には取り組みやすいです。ただしKlipperもKIAUHの登場で導入ハードルは下がっており、設定ファイルの編集に抵抗がなければ挑戦する価値は十分あります。

Raspberry Pi以外のボードでもKlipperは使えますか?

はい、Linuxが動作するボードであれば利用可能です。Orange PiやBTT CB1/Manta、古いノートPCなども使えます。ただしRaspberry Pi 4がもっとも情報が豊富で、トラブルシューティングしやすいとされています。

Klipperを導入すると元のMarlinに戻せなくなりますか?

戻せます。MCUにMarlinファームウェアを再度書き込めば元の状態に復元できます。プリンター本体のハードウェアは変更しないため、リスクは低いです。

スライサーの設定は変更する必要がありますか?

基本的にはそのまま使えますが、Klipper側でPressure Advanceを使う場合はスライサーの「ファームウェアリトラクション」を有効にすることが推奨されます。また速度上限を引き上げたい場合は、スライサー側の速度設定も合わせて見直してください。

参考リンク

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