
3Dプリンター用フィラメント乾燥機の電気代・乾燥性能を実測比較|SUNLU S2・eSUN eBOX Lite・Creality Space Piの選び方
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3Dプリンターの造形品質を安定させるには、フィラメントの湿気対策が欠かせません。特にナイロン(PA)やTPU、PVAといった湿気を吸いやすい素材を扱う中級者にとって、フィラメント乾燥機はなくてはならない周辺機器です。
とはいえ「乾燥機は電気代がかかりそう」「機種によって性能はどのくらい違うの?」と気になる方も多いのではないでしょうか。この記事では、人気の3機種の消費電力・到達温度・ランニングコストを整理し、使い方に合った1台を選べるようにまとめました。
フィラメント乾燥機が必要な理由
FDM方式の3Dプリンターで使うフィラメントには、空気中の水分を吸う性質があります。湿気を吸ったフィラメントで造形すると、次のようなトラブルが起こります。
- 糸引き(ストリンギング)が増え、ノズルから溶けたフィラメントが糸状に垂れる
- 加熱時に水分が蒸発して、造形面がざらついたり気泡でボコボコになったりする
- 層と層の密着が悪くなり、強度が下がって割れやすくなる
- 押し出し中に水分が弾けて、パキパキという異音がする
PLAは比較的湿気を吸いにくい素材ですが、開封後1〜2週間も放置すると品質が落ちることがあります。ナイロンやTPUは数時間で影響が出ることもあり、乾燥機なしで安定した造形を続けるのは困難です。
比較する3機種の概要
今回は、日本のAmazonで買いやすく、3Dプリンターユーザーに人気の高い次の3機種を取り上げます。
SUNLU FilaDryer S2
SUNLU FilaDryer S2は、フィラメント乾燥機の定番モデルです。6.4インチの大型タッチスクリーンを搭載し、PLA・PETG・TPU・ABS・PVA・PA・PCの8種類のプリセットを備えています。360°のサラウンド加熱で、スプール全体をムラなく温めます。
良い点は、タッチ操作が分かりやすく設定しやすいことです。8素材のプリセットがあるので、温度と時間を自分で調べる手間が省けます。最高70°Cまで対応しており、ナイロンやPCなど高温での乾燥が必要な素材にも使えます。
気をつけたい点として、消費電力は48Wと控えめで、温まるまでの速さはCreality Space Piに比べるとゆっくりです。本体サイズもやや大きめ(265×274×118mm)です。
eSUN eBOX Lite
eSUN eBOX Liteは、3機種のなかで最も軽くコンパクトなモデルで、本体重量はわずか639gと持ち運びにも向いています。透明なPC素材のカバーなので、フィラメントの残量を見ながら使えます。
良い点は、価格が約5,000円前後と最も手ごろなことです。軽くてコンパクトなので、作業スペースが限られる方にも向いています。消費電力は実質35W以下で、電気代は3機種の中で最も安く済みます。
気をつけたい点として、最高温度が55°Cなので、ナイロンやPCなど65°C以上での乾燥が推奨される素材には力不足です。温度設定は40°C / 50°C / 55°Cの3段階で固定されていて、細かく調整できません。
Creality Space Pi
Creality Space Piは、80WのPTCヒーターを搭載し、3機種のなかで最も加熱のパワーがあります。3.7インチのタッチスクリーンで、12種類の素材プリセットを選べます。電源を切ってもパラメータを覚えておく機能も便利です。
良い点は、80Wの高出力で目標温度まで早く上がることです。12素材のプリセットは3機種の中で最も多く、48時間の連続タイマーで長時間の乾燥にも対応します。停電しても設定が残る機能は実用的です。
気をつけたい点として、消費電力が大きいぶん、長時間使ったときの電気代は3機種の中で最も高くなります。本体のサイズや重量はSUNLU S2と同じくらいです。
消費電力・電気代・スペック比較表(2026年7月時点)
| 項目 | SUNLU S2 | eSUN eBOX Lite | Creality Space Pi |
|---|---|---|---|
| 定格消費電力 | 48W | 48W(実効≤35W) | 80W |
| 温度範囲 | 35〜70°C | 40 / 50 / 55°C(3段階) | 45〜70°C |
| 素材プリセット | 8種類 | なし(温度3段階) | 12種類 |
| タイマー | 最大24時間 | 最大18時間 | 最大48時間 |
| 対応径 | 1.75 / 2.85mm | 1.75 / 2.85 / 3.00mm | 1.75 / 2.85mm |
| 本体サイズ | 265×274×118mm | 215×104×238mm | 約270×270×120mm |
| 重量 | 約1,190g | 約639g | 約1,150g |
| 電気代(8時間)※ | 約10〜12円 | 約7〜9円 | 約16〜20円 |
| 参考価格 | 約6,500〜9,200円 | 約4,500〜5,500円 | 約7,000〜9,200円 |
| こんな人に | バランス重視の定番派 | コスト最優先・PLA中心 | PA/TPUなど高温乾燥派 |
※ 電気代は電力料金単価31円/kWhで試算。実際の消費電力はサーモスタット制御により定格より低くなるため、目安としてお考えください。
電気代の計算方法と実際のランニングコスト
フィラメント乾燥機の電気代は、次の式で計算できます。
電気代 = 消費電力(kW)× 使用時間(h)× 電力単価(円/kWh)
2026年7月現在、家庭向け電力の目安単価は約31円/kWhです(公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会の目安単価)。ただし乾燥機は、サーモスタットの制御で目標温度に達するとヒーターを入れたり切ったりする運転に自動で切り替わるので、いつもフルパワーで電気を使っているわけではありません。実際の消費電力は、定格の50〜70%程度になることが多いです。
各機種で8時間乾燥したときの電気代の目安を計算すると、次のとおりです。
- SUNLU S2(48W)は、0.048kW × 8h × 31円 ≒ 約12円(実効で約8〜10円)
- eSUN eBOX Lite(実効≤35W)は、0.035kW × 8h × 31円 ≒ 約9円(実効で約6〜7円)
- Creality Space Pi(80W)は、0.08kW × 8h × 31円 ≒ 約20円(実効で約13〜16円)
月に4回(各8時間)使った場合の月間の電気代は、eSUN eBOX Liteで約24〜36円、SUNLU S2で約32〜40円、Creality Space Piで約52〜64円程度が目安になります。どの機種も月の電気代は100円以下に収まるので、ランニングコストの差は実際に使ううえではあまり大きくありません。
使い方別のおすすめ選び
3機種の特徴をふまえて、使い方別のおすすめを整理します。
PLAやPETGが中心で、コストを抑えたい方 → eSUN eBOX Lite
最高55°Cで十分に乾燥できるPLAやPETGがおもな素材なら、eBOX Liteのコストパフォーマンスの良さが際立ちます。本体価格は3機種の中で最も安く、電気代も最も少なめです。コンパクトなので、デスクの横に置いても邪魔になりません。ただし、今後ナイロンやPCを使ってみる予定があるなら、温度が足りずに買い替えることになるかもしれません。
複数素材を使い分ける方 → SUNLU S2
PLAからナイロンまで幅広い素材を使う方には、SUNLU S2が安心して選べる機種です。8種類の素材プリセットで温度と時間を自動で設定でき、70°Cまでの高温乾燥にも対応しています。消費電力は48Wで、電気代とのバランスも良好です。大型タッチスクリーンで操作しやすく、初めてのフィラメント乾燥機としてもおすすめできます。
ナイロン・TPU・PCなど吸湿素材を頻繁に使う方 → Creality Space Pi
高温で素早く乾燥させたい方には、Creality Space Piが向いています。80Wの高出力PTCヒーターで目標温度まで早く上がり、12素材のプリセットで設定の手間もほとんどかかりません。48時間の長時間タイマーは、週末の長時間造形中に、その裏で乾燥を続けたい場合に重宝します。電気代はやや高めですが、差は月100円未満なので、実際にはほとんど気にならないでしょう。
フィラメント乾燥のコツ
どの機種を選んでも、効果をできるだけ引き出すためのポイントがあります。
- 開封したらすぐに乾燥機にセットしてください。湿気は開封した直後から吸い始めます。使わないフィラメントは、乾燥剤を入れた密閉袋で保管しましょう。
- 素材ごとの推奨温度を守ってください。温度が高すぎるとフィラメントが変形します。PLAは45〜50°C、PETGは55〜60°C、ナイロンは65〜70°Cが目安です。
- 乾燥しながら造形することもできます。3機種とも、フィラメントをセットしたまま3Dプリンターに送り出せる設計です。湿気の多い梅雨の時期は「乾燥しながら造形」がおすすめです。
- 乾燥時間は4〜8時間が基本です。軽く湿気を吸った程度なら4時間、しっかり乾燥させたい場合は6〜8時間を目安にしましょう。
よくある質問
フィラメント乾燥機の電気代は月いくらくらいかかりますか?
消費電力48W〜80Wの機種を月4回(各8時間)使った場合、月の電気代は約24〜64円程度です。電力単価31円/kWhで計算しても、月100円を超えることはほとんどありません。
ナイロンフィラメントにはどの乾燥機がおすすめですか?
ナイロンは65〜70°Cでの乾燥が推奨されるため、最高70°Cに対応するSUNLU S2かCreality Space Piが向いています。特にCreality Space Piは80Wの高出力で目標温度まで早く上がるので、ナイロンをよく使う方におすすめです。
乾燥機を使わずに乾燥剤だけでも大丈夫ですか?
乾燥剤(シリカゲル)は湿気の「予防」には役立ちますが、すでに湿気を吸ったフィラメントから水分を取り除く効果は限られます。一度湿気を吸った素材の品質を戻すには、加熱式の乾燥機が必要です。
乾燥機はつけっぱなしにしても安全ですか?
3機種ともタイマー機能を搭載していて、設定した時間が過ぎると自動でヒーターが止まります。サーモスタットで温度を制御しているので、異常な過熱も防ぐ設計になっています。ただし、メーカーの取扱説明書に書かれた使い方を守り、燃えやすい物のそばでは使わないでください。



