
ABSフィラメントおすすめ5選|耐熱性・強度で選ぶメーカー別比較と反り対策のコツ
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「PLAだと熱で変形してしまう」「PETGでは強度が足りない」——実用部品を3Dプリンターで作り始めると、多くの方がたどり着くのがABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)フィラメントです。耐熱温度は約85〜105℃とPLA(約60℃)を大きく上回り、衝撃強度にも優れるため、自動車の内装パーツや電子機器のケースなど「実際に使うもの」を印刷するには欠かせない素材といえます。
一方で、ABSには「反りやすい」「臭いが強い」「エンクロージャーが必要」といった扱いにくさがあるのも事実です。本記事では、人気メーカー5社のABSフィラメントを比較しながら、選び方のポイントと反り・臭い対策のコツまでまとめて解説します。
ABSフィラメントを選ぶ3つのポイント
ABSフィラメントはメーカーごとに配合や品質管理が異なるため、単純に「安いものを選べばいい」とはなりません。以下の3つの観点で比較すると、自分の用途に合った製品を見つけやすくなります。
1. 寸法精度(公差)
フィラメント径の公差が小さいほど、押し出し量が安定して造形品質が向上します。±0.02mmのものはハイエンド、±0.05mmが標準的な水準です。精密な嵌合パーツを作る場合は公差の小さい製品を選びましょう。
2. 反りにくさ(低ワープ設計)
ABS最大の課題である「反り」は、メーカーによって樹脂の配合で軽減を図っている製品があります。「ABS+」や「ABS Pro」と名付けられた改良版は、通常のABSより反りが抑えられている傾向があります。
3. 臭いの少なさ
ABS印刷時に発生するスチレンガスは独特の臭いがあります。Polymaker PolyLite ABSのように、製造工程で揮発成分を低減した製品を選ぶと、臭いを軽減できます。ただし、どの製品でも換気は必須です。
おすすめABSフィラメント5選
1. eSUN ABS+(コスパ最強の定番)
中国・深圳のフィラメント大手eSUNが販売するABS+は、通常のABSに改良を加えて反りと層間剥離を抑えた製品です。1kgあたり約1,900〜2,600円と価格が手頃で、カラーバリエーションも豊富。寸法精度は±0.05mmと標準的ですが、安定した出力が可能で「まずABSを試してみたい」という方に向いています。
良い点:価格が安く入手しやすい/カラーが豊富/ABS+で反りが軽減
気をつけたい点:公差±0.05mmはやや大きめ/ロットによる品質差の報告あり
2. SUNLU ABSフィラメント(初めてのABSに)
PLAフィラメントで高い人気を誇るSUNLUは、ABSでもコストパフォーマンスの良い製品を展開しています。寸法精度±0.02mmと公差が小さく、押し出しの安定性に優れます。真空パック+乾燥剤同梱で湿気対策もされており、Amazonでの入手性も良好です。
良い点:±0.02mmの高い寸法精度/真空パック包装/手頃な価格帯
気をつけたい点:通常ABSのため反り対策は自分で工夫が必要/カラーの選択肢がやや少なめ
3. Polymaker PolyLite ABS(臭い控えめ・高品質)
Polymaker PolyLite ABS 1.75mm 1kg
Polymakerは独自の製造プロセスで揮発性成分を大幅にカットし、ABS特有の臭いを低減しています。ビカット軟化温度104℃と耐熱性が高く、寸法精度±0.03mm。やや価格は高め(1kgあたり約3,500〜5,200円)ですが、品質の安定感を求める方や、密閉空間で作業する方にはおすすめです。
良い点:臭いが少ない独自製法/ビカット軟化温度104℃の高耐熱/安定した品質
気をつけたい点:価格がやや高め/推奨ノズル温度245〜265℃とやや高い
4. Bambu Lab ABS(AMS対応・純正の安心感)
Bambu Lab ABS フィラメント 1.75mm 1kg
Bambu Labプリンターユーザーなら第一候補になる純正ABSです。RFIDタグ搭載でAMS(自動材料供給システム)と連携し、印刷パラメータが自動設定されます。熱変形温度87℃、寸法精度±0.03mmで実用十分。耐水性にも優れ、湿気の多い環境で使う部品にも適しています。リユーサブルスプール採用でゴミも減らせます。
良い点:RFID対応でAMS自動設定/耐水性が高い/リユーサブルスプール
気をつけたい点:他社プリンターではRFIDの恩恵なし/一部ロットでスプール巻きの品質報告あり
5. OVERTURE ABS(ビルドサーフェス付属でお得)
OVERTURE ABS フィラメント 1.75mm 1kg
OVERTUREのABSフィラメントは、ビルドサーフェス(ビルドシート)が付属するのが特徴です。ABS印刷で課題になるベッドへの定着をサポートしてくれるため、初めてABSに挑戦する方にはありがたいセットです。推奨ノズル温度は250〜260℃とやや高めの設定が必要ですが、層間接着が良好で強度のある造形が可能です。
良い点:ビルドサーフェス付属で定着しやすい/層間接着が良好で強度が出る
気をつけたい点:推奨ノズル温度がやや高め(250〜260℃)/一部のロットで絡まりの報告あり
価格・スペック比較表(2026年8月時点)
| 商品名 | 参考価格(1kg) | 寸法精度 | 推奨ノズル温度 | 特徴 | こんな人に |
|---|---|---|---|---|---|
| eSUN ABS+ | 約¥1,900〜2,600 | ±0.05mm | 230〜260℃ | 低反り改良版・カラー豊富 | コスパ重視・ABS入門 |
| SUNLU ABS | 約¥1,800〜2,500 | ±0.02mm | 230〜250℃ | 高精度・真空パック | 精密パーツ・コスパ重視 |
| Polymaker PolyLite ABS | 約¥3,500〜5,200 | ±0.03mm | 245〜265℃ | 低臭気・ビカット軟化温度104℃ | 品質重視・密閉環境 |
| Bambu Lab ABS | 約¥3,000〜3,800 | ±0.03mm | 240〜260℃ | RFID・AMS対応・耐水性 | Bambu Labユーザー |
| OVERTURE ABS | 約¥2,000〜2,800 | ±0.05mm | 250〜260℃ | ビルドサーフェス付属 | 定着に不安がある方 |
※ 価格はAmazon.co.jpでの販売価格を参考にしています。時期やカラーにより変動します。
ABS印刷の反り対策 5つのコツ
ABSフィラメントで最もよくある失敗が「反り(ワーピング)」です。印刷中に造形物の端が持ち上がり、ベッドから剥がれてしまう現象で、ABSの熱収縮率の高さが原因です。以下の対策を組み合わせることで、反りを大幅に軽減できます。
1. エンクロージャー(密閉筐体)を使う
ABS印刷で最も効果的な対策です。造形エリアを密閉して庫内温度を40〜60℃に保つことで、印刷中の急激な温度変化を防ぎます。Bambu Lab X1CやP1Sのように標準でエンクロージャーが付いた機種もありますし、市販の後付けカバーやDIYの段ボール箱でも効果があります。
2. ヒートベッド温度を高めに設定する
ABSの場合、ベッド温度は90〜110℃が目安です。PLAの50〜60℃と比べてかなり高温ですが、ベッドとの温度差を小さくすることで反りを抑えられます。ベッド素材はPEIシートやガラス+スティックのりがABSと相性が良いとされています。
3. ブリム(Brim)を付ける
スライサーの設定で造形物の周囲に薄い「つば」を追加します。ベッドとの接触面積が増えるため、端の反り上がりを物理的に抑えられます。ブリム幅は5〜10mmが目安です。
4. 冷却ファンをオフまたは最小にする
PLAやPETGではファンを回して冷却しますが、ABSでは冷却ファンをオフにするか、ごく弱く(10〜20%)設定します。急冷による層間の収縮差が反りや層間剥離の原因になるためです。
5. 1層目の印刷速度を遅くする
最初のレイヤーがしっかりベッドに定着するかどうかで、その後の反りが決まります。1層目の速度は通常の50〜70%程度に落とし、確実に密着させましょう。
ABS印刷時の臭い対策
ABSを加熱すると微量のスチレンガスが発生します。健康被害のリスクは限定的とされていますが、長時間の作業では不快に感じることがあります。以下の対策を取り入れましょう。
換気を確保する
プリンターを設置する部屋では窓を開けるか換気扇を稼働させ、常に空気の流れを作ることが基本です。密閉した部屋での長時間運転は避けてください。
活性炭フィルター付きエンクロージャーを使う
一部のエンクロージャーには活性炭フィルターが内蔵されており、臭気成分を吸着してくれます。Bambu Lab X1Cには標準で搭載されています。
低臭気フィラメントを選ぶ
前述のPolymaker PolyLite ABSのように、製造段階で揮発成分を低減した製品を選ぶのも有効な手段です。eSUNのABS+も通常ABSよりは臭いが控えめとされています。
PLA・PETG・ABSの使い分け
どの素材を使うべきか迷ったときのために、3大フィラメントの特性を整理しておきます。
| 項目 | PLA | PETG | ABS |
|---|---|---|---|
| 耐熱温度 | 約60℃ | 約75〜80℃ | 約85〜105℃ |
| 強度(衝撃) | 低い(脆い) | 中程度 | 高い |
| 反り | ほぼなし | 少ない | 大きい |
| 臭い | ほぼなし | 少ない | あり |
| エンクロージャー | 不要 | 不要 | 推奨 |
| 向いている用途 | フィギュア・試作 | 容器・構造部品 | 実用部品・治具 |
ABSは扱いにくさがある反面、耐熱性と強度では他の2素材を上回ります。車のダッシュボードに置くスマホホルダーや、熱源の近くで使う治具など「熱と衝撃に耐える部品」を印刷するなら、ABSが最適です。
よくある質問
ABSフィラメントの印刷にエンクロージャーは必須ですか?
必須ではありませんが、強く推奨されます。エンクロージャーなしでも小さな部品なら印刷できることがありますが、大きなパーツでは反りや層間剥離が起きやすくなります。段ボール箱で囲うだけでも効果があります。
ABSの臭いは体に悪いですか?
ABSを加熱すると微量のスチレンなどの揮発性有機化合物(VOC)が発生します。通常の家庭用3Dプリンターでの使用量であれば健康リスクは限定的とされていますが、換気の良い環境で使用し、長時間の連続曝露は避けることが推奨されています。
ABS印刷に向いているプリンターの条件は?
ノズル温度260℃以上に対応し、ヒートベッドが110℃まで加熱できる機種が望ましいです。エンクロージャー付きのBambu Lab X1CやP1S、Creality K1などが代表的です。オープンフレームの機種でも後付けカバーを追加すれば対応できます。
ABS+やABS Proは通常のABSと何が違いますか?
ゴム成分の配合調整や添加剤により、通常ABSの弱点である反り・層間剥離・脆さを改善した改良版です。印刷設定は通常ABSとほぼ同じですが、反りが軽減されるため初心者でも扱いやすくなっています。



