
3Dプリンター造形物の塗装入門|下地処理から仕上げまでの基本テクニック
3Dプリンターで作った造形物は、そのままでも十分楽しめますが、塗装をすると完成度がぐっと上がります。ただ、「どこから手をつければいいの?」「PLAって塗れるの?」と悩む方も多いのではないでしょうか。この記事では、FDM(熱溶解積層)方式と光造形方式それぞれの造形物をきれいに塗装するための基本テクニックを、初心者の方にもわかりやすく解説します。100均で揃う道具も紹介しています。
塗装前に知っておきたい基礎知識
3Dプリンターの造形物を塗装する際にまず理解しておきたいのが、素材ごとの特性です。FDM方式で最も一般的なPLA(ポリ乳酸)は、塗料の定着が比較的良い素材です。ただし熱に弱く、約60℃前後で変形し始めるため、乾燥時の温度管理が重要になります。ABSはPLAより耐熱性があり、アセトン処理で表面を滑らかにできるという独自のメリットもあります。
光造形(SLA/DLP/MSLA)方式のレジン造形物は、FDMに比べて表面が滑らかなため、下地処理の手間が少ないのが利点です。ただし、未硬化レジンが残っていると塗料がうまく乗らないため、IPA(イソプロピルアルコール)での洗浄とUVライトによる二次硬化を必ず行ってから塗装工程に入りましょう。
どちらの方式でも、塗装の基本工程は「研磨(ヤスリがけ)→ サーフェイサー → 塗装 → トップコート」の順番です。この流れを守ると、仕上がりの品質が大きく変わります。
ヤスリがけの番手順序と正しい研磨方法
塗装の仕上がりを左右する最も重要な工程が「ヤスリがけ(サンディング)」です。FDM造形物では積層痕(レイヤーライン)を消すことが主な目的になります。番手は以下の順序で進めるのがおすすめです。
- 120番:積層痕やサポート痕を大まかに削る(粗削り)
- 240番:120番の傷を均す(中研ぎ)
- 400番:表面を滑らかに整える
- 600〜800番:塗装前の仕上げ研磨(ここから水研ぎ推奨)
光造形の場合は表面が元から滑らかなので、400番程度から始めて600〜800番で仕上げれば十分です。サポート痕がある部分のみ240番から始めましょう。
研磨のコツは次のとおりです。番手は飛ばさず、順番に上げてください。120番から400番にいきなり飛ぶと、粗い傷が残ってしまいます。400番以降は「水研ぎ」がおすすめです。紙やすりを水に浸しながら研磨すると、摩擦熱によるPLAの変形を防げます。力を入れすぎず、軽いタッチで一定方向に動かすのがポイントです。曲面にはスポンジやすりが便利で、平面には当て木を使うと均一に研磨できます。
サーフェイサーの選び方と塗り方
サーフェイサーとは、塗装前に吹く下地塗料のことです。細かな傷を埋めて表面を均一にし、上塗り塗料の発色と定着を良くする役割があります。3Dプリンター造形物の塗装では、このサーフェイサー工程が仕上がりに大きく影響します。
おすすめのサーフェイサーは以下のとおりです。
- Mr.サーフェイサー 500/1000/1500(GSIクレオス):模型用の定番。番号が大きいほど粒子が細かく、仕上げ向きです。500番は深い傷埋めに、1000〜1500番は最終下地に適しています
- タミヤ ファインサーフェイサー:粒子が細かく、光造形の仕上げに相性が良いです
- 染めQプライマー:樹脂への密着性が高く、PLAにも使いやすいスプレータイプです
サーフェイサーは次の手順で塗ります。
- 造形物の表面を中性洗剤で洗い、油分や研磨粉を完全に落とす(脱脂)
- スプレー缶をよく振り、造形物から20〜30cm離して薄く吹く
- 一度に厚塗りせず、薄く2〜3回に分けて吹き重ねる
- 完全に乾燥させた後、800〜1000番の紙やすりで軽く表面を整える
- 必要に応じてサーフェイサーの吹き付けと研磨を繰り返す
塗装のテクニックとPLA変形を防ぐ乾燥のコツ
下地が整ったら、いよいよ塗装です。初心者の方には、以下の3つの塗装方法をおすすめします。
1. スプレー塗装(缶スプレー)
最も手軽で均一に塗れる方法です。タミヤやMr.カラーのスプレーが入手しやすく、色数も豊富です。20〜30cm離して、薄く複数回に分けて吹くのが基本。一度に厚塗りすると液だれやムラの原因になります。
2. 筆塗り
細かい部分の塗り分けに適しています。アクリル塗料(水性)は臭いが少なく扱いやすいので、室内作業にも向いています。一方向に塗り、乾いてから重ね塗りするのがムラを防ぐコツです。
3. エアブラシ
最も美しい仕上がりが得られますが、機材の初期投資が必要です。グラデーション塗装や細かな表現が可能で、本格的に取り組みたい方におすすめです。
PLAの変形を防ぐには、乾燥のさせ方にコツがあります。PLAは約60℃で変形し始めるため、ドライヤーでの強制乾燥は厳禁です。直射日光の当たらない、風通しの良い日陰で自然乾燥させましょう。夏場の車内や窓際など、高温になる場所での乾燥は避けてください。乾燥時間の目安は、スプレー塗料で30分〜1時間、筆塗りアクリルで1〜2時間ですが、気温や湿度によって変わります。完全乾燥前に触ると指紋がつくため、塗装クリップや持ち手棒を活用しましょう。
最後にクリアー(トップコート)を吹くと、塗膜の保護と光沢感の調整ができます。ツヤありのグロス仕上げ、ツヤなしのマット仕上げ、中間のセミグロスから好みに合わせて選びましょう。
100均で揃う塗装道具リスト
塗装をはじめるにあたって、すべてを専門店で揃える必要はありません。ダイソーやセリアなどの100均ショップで手に入る便利なアイテムを紹介します。
ダイソーで買えるものは次のとおりです。
- 紙やすりセット:各番手がセットになったものが販売されています
- アクリル絵の具:筆塗り用に。発色は専用塗料に劣りますが、練習用には十分です
- 塗装ベース&塗装クリップ:パーツを挟んで固定でき、スプレー塗装時に便利です
- スポンジやすり:曲面の研磨に重宝します
- マスキングテープ:塗り分け時の養生に使えます
セリアでは次のものが買えます。
- 逆作動ピンセット:小さなパーツの保持に便利。挟む力が保たれるので作業効率が上がります
- 極細オイルボトル:塗料の小分けや調合に使えます
- 筆セット:太さの異なる筆がセットになっています
次のものは100均では揃いにくいので、専門店での購入をおすすめします。
- サーフェイサー(スプレー缶)
- 模型用スプレー塗料
- トップコート(クリアースプレー)
- 模型用接着剤(瞬間接着剤のパテ代わり使用など)
まずは100均で基本道具を揃えて始めてみて、慣れてきたら専門的な道具にステップアップしていくのがおすすめです。
よくある質問
PLAの造形物にそのまま塗料を塗っても大丈夫ですか?
塗ること自体は可能ですが、サーフェイサーなしだと塗料の密着が弱く、剥がれやすくなります。下地処理として研磨とサーフェイサーの工程を挟むと、仕上がりと耐久性が大きく向上します。
水性塗料と油性塗料、どちらを選べばいいですか?
初心者の方には水性アクリル塗料がおすすめです。臭いが少なく、筆は水で洗えるため扱いやすいです。発色や耐久性を重視する場合はラッカー系塗料が適していますが、換気と防毒マスクの使用が必須になります。
光造形の造形物はFDMと同じ手順で塗装できますか?
基本的な流れは同じですが、光造形の場合はIPAでの洗浄とUV二次硬化を必ず行ってください。また、表面が元から滑らかなので、粗い番手のヤスリがけは不要なことが多く、400番程度からの研磨で十分です。
塗装が失敗したらやり直せますか?
やり直しは可能です。水性アクリル塗料なら乾燥前に水で拭き取れます。乾燥後は、紙やすりで塗膜を落としてから再塗装できます。ラッカー系塗料はうすめ液(シンナー)で落とせますが、PLAはシンナーに弱い場合があるので注意が必要です。
塗装後の造形物は屋外で使えますか?
UVカット効果のあるトップコートを塗れば、ある程度の屋外使用は可能です。ただし、PLAは紫外線や高温に弱いため、長期間の屋外展示には向きません。屋外用途にはASAやPETGなど耐候性の高い素材での造形を検討してください。
参考リンク
- 3Dプリント部品の塗装ガイド 下地処理編 — Formlabs正規代理店 データ・デザイン
- 3Dプリントの塗装方法を徹底解説|初心者でも失敗しない仕上げのコツとは? — KUWABARA 3D PRINT
- 3Dプリンターペイントの基礎から塗装方法まで徹底解説 — テクニカラー
- How to Finish 3D Printed Parts — Fictiv
- 3Dプリントの表面処理方法を解説!品質を向上させる5つの基本工程とは? — KUWABARA 3D PRINT



