
OrcaSlicer 2.4完全ガイド|Zアンチエイリアシング・Orca Cloudなど新機能の使い方
2026年6月20日、オープンソースのFDMスライサー「OrcaSlicer」がバージョン2.4.0の正式版をリリースしました。5月25日のアルファ版公開から約1か月のテスト期間を経て、安定した形で多数の新機能が利用できるようになっています。
今回のアップデートは過去最大級と言ってよい規模です。曲面の積層縞を軽減するZアンチエイリアシング(ZAA)、プロファイルをクラウド同期するOrca Cloud、マルチマテリアル連携のHappy Hare統合など、日常のプリント品質とワークフローを大きく改善する機能が揃っています。本記事では、主要な新機能の概要と具体的な設定方法をまとめました。
Zアンチエイリアシング(ZAA)— 曲面の積層縞を軽減
OrcaSlicer 2.4の目玉機能がZアンチエイリアシング(Z Anti-Aliasing / ZAA)です。FDM方式では避けられなかった、ドーム状や緩やかな傾斜面に現れる「階段状の積層縞」を大幅に軽減できます。
仕組みは、各押出ポイントで元の3Dメッシュに対してレイキャスト(光線追跡)を行い、Z高さを微調整するというものです。1レイヤーの中でもZ値を変化させることで、ツールパスが実際の曲面形状に沿うようになり、レイヤー高さ全体を細かくしなくても見た目が滑らかになります。
設定方法
Print Settings → Quality セクションに、以下の5つの新しい設定項目が追加されています。
- zaa_enabled:ZAAのオン/オフ切り替え
- zaa_min_z:ZAAを適用する最小Z高さの指定
- zaa_minimize_perimeter_height:外周のZ高さ変動を最小化する
- zaa_dont_alternate_fill_direction:充填方向の交互反転を無効にする
- zaa_region_disable:特定領域でZAAを無効にする
まずは zaa_enabled をオンにして、デフォルト設定でテストプリントしてみるのがおすすめです。ドーム形状やフィレット(角のR加工)のあるモデルで効果が分かりやすいでしょう。
Orca Cloud — プロファイルのクラウド同期と共有
Orca Cloud(cloud.orcaslicer.com)は、OrcaSlicerプロジェクト独自のクラウドプラットフォームです。プリンター・フィラメント・プロセスの各プロファイルを、複数のPCやマシン間で自動同期できるようになりました。
主な機能
- プロファイル同期:ログインするだけで、すべてのマシンでプリセットが自動同期されます
- プリセットバンドル:調整済みプロファイルを説明文・画像・対応プリンター情報付きのバンドルにまとめ、コミュニティに公開したり、チーム内で共有したりできます
- バージョン履歴:クラウド対応プロファイルの変更履歴が記録され、以前のバージョンにロールバックすることも可能です
- 購読通知:購読しているプリセットに更新があると通知が届きます
v2.4.0での改善点
正式版では、オフラインでもログイン状態が維持されるようになりました。また、ローカルで再作成したプリセットが同期で上書きされてしまう問題が修正されています。複数マシンで作業する方にとって、プロファイル管理が格段に楽になるはずです。
Machine Input Shaping — スライサー側で振動を制御
Machine Input Shapingは、これまでファームウェア側でしか設定できなかったインプットシェイピングのパラメータを、スライサーから直接設定できるようにする機能です。高速プリント時に発生しがちなリンギング(波打ち)やゴースティング(残像模様)を抑えます。
X軸・Y軸の周波数とダンピング値を設定でき、Adaptive Klipper、RRF(RepRapFirmware)、Marlin 2のインプットシェイパータイプに対応しています。ファームウェアを直接編集することなく、スライサーのUIから調整できるのが利点です。
その他の注目アップデート
Gyroid Infill の最適化
「Optimize gyroid wave」オプションが追加されました。密度・ライン間隔・レイヤー高さに基づいて、ジャイロイドの波長と振幅を領域ごとに自動調整します。オイラー・ベルヌーイ座屈理論を活用し、Z軸方向の圧縮に対する耐座屈性を高めるものです。構造パーツの強度を重視する方に有用な機能です。
Happy Hare マルチマテリアル連携
Happy Hareマルチマテリアルシステムとの連携が追加されました。Moonraker経由でフィラメント情報を同期し、スライサー側で実際にセットされているフィラメントの種類・色を自動検出できます。手動でフィラメント情報を入力する手間が省けます。
3MFファイル送信
Printer Settings → Basic Information → Advanced に「Use 3MF instead of G-code」トグルが追加されました。スライスしたジョブをG-codeではなく、オブジェクトラベルやメタデータを含む3MFパッケージとしてプリンターに送信できます。
パフォーマンス改善
G-codeのポストプロセスパターンがキャッシュされるようになり、スライスからプレビュー表示までの速度が最大65%向上(Klipperプリンターの場合)しました。日常的なスライス作業のストレスが軽減されます。
その他の改善
- スカート生成の刷新:オブジェクトごとのスカートが衝突を検知し、ブリムやサポートとの干渉を回避
- UIの改善:サイドバーにアクティブなプリンター名を表示、フィラメントリストにカウントバッジ追加
- トラブルシュートセンター:サイドバーからアクセスできるデバッグ用の新パネル
- ネイティブホストサポート:MoonrakerおよびCreality Kシリーズのプリンターに直接対応
- Microsoft Store対応:Windows 11向けにMSIXインストーラーチャネルを追加
アップデート方法
OrcaSlicer 2.4.0はGitHub公式リリースページからダウンロードできます。Windows、macOS、Linuxの各プラットフォームに対応しています。
アップデート前に、現在のプロファイルをエクスポートしてバックアップしておくことをおすすめします。Orca Cloudを利用している場合は自動同期されますが、ローカルでカスタマイズしたプリセットは念のためエクスポートしておくと安心です。
なお、2026年7月時点ですでにv2.4.1(ARM64ネイティブ対応、スカート・ブリム生成の改良)とv2.4.2(クラウド同期・接続安定性の修正)のメンテナンスアップデートもリリースされています。最新版の利用をおすすめします。
よくある質問
OrcaSlicer 2.4は無料で使えますか?
はい。OrcaSlicerはオープンソースソフトウェア(AGPLv3ライセンス)で、GitHubから無料でダウンロードできます。Orca Cloudも現時点では無料で利用可能です。
Zアンチエイリアシングを使うとプリント時間は長くなりますか?
ZAAはレイヤー高さ自体を変えるわけではなく、既存レイヤー内でZ値を微調整する仕組みのため、プリント時間への影響はほとんどありません。レイヤー高さを細かくするよりも効率的に表面品質を改善できます。
Orca Cloudを使わなくてもアップデートできますか?
Orca Cloudへの登録は任意です。クラウド機能を使わなくても、ZAAやGyroid最適化など他のすべての新機能はローカルで利用できます。
Happy Hare連携はどのプリンターで使えますか?
Happy Hareを搭載し、Moonraker経由で通信するKlipperベースのプリンターで利用できます。Moonrakerとの接続設定が正しく行われていれば、フィラメント情報の自動同期が有効になります。



