
3Dプリンターでスマホスタンド・ケーブルホルダーを自作|初心者向け実用品モデリング入門
「3Dプリンターを買ったけど、何を作ればいいかわからない」——そんな方にまずおすすめしたいのが、デスク周りの実用品です。スマホスタンド、ケーブルホルダー、ペン立てといった身近な小物は、モデリングの難易度が低く、完成後すぐに使えるため、3Dプリンター入門にぴったり。この記事では、無料の3D CADソフト「TinkerCAD」と「Fusion 360」を使い、設計から印刷までの全手順をステップバイステップで紹介します。
なぜデスク周りの実用品が初心者におすすめなのか
3Dプリンターを使い始めた初心者が最初に挫折しやすいのは、「何を作るか」のアイデア出しです。フィギュアやガジェットケースのように高い精度が求められる作品は、モデリング技術もプリント設定の知識も必要になります。
その点、スマホスタンドやケーブルホルダーなどのデスク小物は、四角や円柱の組み合わせで形が作れるため、3D CAD初心者でも無理なく取り組めます。さらに、日常的に使うものなので完成後の満足感も大きく、「次も何か作ってみよう」というモチベーションにつながります。
材料費の面でも優秀です。PLAフィラメントを使えば、スマホスタンド1個あたりのフィラメント使用量は20〜40g程度。1kgスプールで25個以上作れる計算になるため、1個あたり数十円〜100円程度のコストで実用品が手に入ります。
TinkerCADでスマホスタンドを設計する(超初心者向け)
TinkerCADはAutodeskが提供するブラウザベースの無料3D CADです。インストール不要で、アカウントを作成すればすぐに使い始められます。直感的なドラッグ&ドロップ操作で3Dモデルを作れるため、CADが初めての方に最適です。
スマホスタンドの設計手順
- ベースを作る:「ボックス」を配置し、幅80mm×奥行60mm×高さ8mmの板状に調整します。これがスタンドの土台になります。
- 背もたれを追加する:もう1つ「ボックス」を配置し、幅80mm×奥行5mm×高さ70mmに設定。土台の後方に配置し、65〜75度の角度をつけます。「回転」ツールで角度を調整しましょう。
- スマホを支えるリップを付ける:土台の前端に幅80mm×奥行10mm×高さ12mmのボックスを配置します。これがスマホの底面を支えるストッパーになります。
- 充電ケーブル用の穴を開ける:「円柱(穴)」を背もたれの下部中央に配置して、ブーリアン演算(グループ化)で穴を開けます。直径15mm程度にすると、USB-Cケーブルが通ります。
- STLエクスポート:完成したら右上の「エクスポート」から「.STL」形式でダウンロードします。
TinkerCADの操作に慣れてきたら、角を「フィレット(丸み)」に見立てた球体で削ったり、好きな文字を刻印したりとカスタマイズも楽しめます。
Fusion 360でケーブルホルダーを設計する(ステップアップ編)
Fusion 360はAutodeskのプロ向け3D CADソフトで、個人利用・非商用であれば無料で使えます。TinkerCADと比べてスケッチ(2D図面)から立体を作る「パラメトリックモデリング」が可能で、寸法を数値で正確に指定できるのが強みです。
ケーブルホルダーの設計手順
- スケッチを描く:XZ平面に新規スケッチを作成し、ケーブルを挟む断面形状(U字型)を描きます。幅12mm、深さ15mm、底部の丸みR3mmが目安です。
- 押し出しで立体化する:「押し出し」コマンドでスケッチを30mm押し出し、立体にします。
- ベース部分を追加する:底面にさらにスケッチを描き、デスクに貼り付けるための平板部分(40mm×30mm×3mm)を作成します。
- フィレットで角を丸める:「フィレット」コマンドで各エッジにR2mmの丸みを付けます。角を丸めることで見た目がきれいになるだけでなく、3Dプリント時のオーバーハング問題も軽減できます。
- 複数連結タイプに拡張:「パターン(矩形)」コマンドで、U字溝を15mm間隔で3〜5個並べると、複数のケーブルをまとめて整理できるホルダーになります。
- STLエクスポート:「メッシュ」メニューから「STLとして保存」を選択します。リファインメントは「中」で十分です。
Fusion 360では「パラメータ」機能を使って寸法を変数化しておくと、ケーブルの太さやホルダーの数を後から簡単に変更できます。
3Dプリントの推奨設定と仕上げのコツ
モデリングが完了したら、スライサーソフト(Cura、PrusaSlicer、Bambu Studioなど)でプリント用のGコードに変換します。デスク小物の印刷に適した設定を紹介します。
推奨プリント設定
| 項目 | 推奨値 | 備考 |
|---|---|---|
| フィラメント | PLA | 初心者に扱いやすく、カラーバリエーションも豊富 |
| ノズル温度 | 200〜210℃ | フィラメントメーカーの推奨値に従う |
| ベッド温度 | 50〜60℃ | 反りを防止 |
| レイヤー高さ | 0.2mm | 仕上がりと速度のバランスが良い |
| インフィル(充填率) | 15〜20% | デスク小物には十分な強度 |
| サポート材 | 基本なし | 設計時にオーバーハング45度以内にすれば不要 |
仕上げのコツ
- 底面の処理:ブリム(つば)を付けて印刷した場合、バリをカッターナイフやヤスリで処理しましょう。
- 滑り止め:スマホスタンドやケーブルホルダーの底面に市販のゴムシート(100均で入手可)を貼ると、デスク上で滑りにくくなります。
- 色選び:マットPLAフィラメント(eSUN マットPLAなど)を使うと、積層痕が目立ちにくく既製品のような仕上がりになります。白・黒・グレーはデスクに馴染みやすい定番色です。
- ペン立てへの応用:スマホスタンドの設計を応用して、円筒形のペン立ても作れます。TinkerCADなら「円柱」から「円柱(穴)」を引くだけで簡単に作成できます。内径35mm、外径40mm、高さ100mm程度が使いやすいサイズです。
無料データを活用してアレンジする方法
ゼロからモデリングするのが難しいと感じる場合は、既存の無料3Dデータをダウンロードしてアレンジする方法もあります。以下のサイトでは、スマホスタンドやケーブルホルダーの3Dデータが多数公開されています。
- Thingiverse:世界最大級の3Dモデル共有サイト。「phone stand」で検索すると数千件のデータが見つかります。
- Printables:Prusa社が運営するサイト。品質の高いモデルが多く、評価やコメントも参考になります。
- MakerWorld:Bambu Lab社が運営。2025年以降、デスクガジェットの人気カテゴリが急成長しています。
ダウンロードしたSTLファイルをTinkerCADにインポートして、サイズ変更や穴の追加などのカスタマイズを加えれば、自分だけのオリジナル作品に仕上げられます。まずは既存データの改造から始めて、慣れてきたらゼロからの設計に挑戦するのもおすすめのステップアップ方法です。
よくある質問
TinkerCADとFusion 360、初心者はどちらを使うべきですか?
まったくの初心者なら、インストール不要でブラウザから操作できるTinkerCADがおすすめです。直感的にブロックを組み合わせる操作で3Dモデルが作れます。寸法を正確に指定したい場合や、より複雑な形状に挑戦したくなったらFusion 360にステップアップするとよいでしょう。
スマホスタンドの印刷にはどのくらいフィラメントを使いますか?
一般的なサイズのスマホスタンドで20〜40g程度です。1kgスプール(2,000〜3,000円程度)で25個以上作れるため、1個あたり100円前後のコストで自作できます。
PLA以外の素材でも作れますか?
PETG素材を使うと耐熱性と耐久性が向上します。ただし印刷の難易度がやや上がるため、最初はPLAで試してから他の素材に挑戦するのがおすすめです。TPU(柔軟素材)で滑り止めパーツだけ別に印刷する方法もあります。
サポート材なしで印刷できますか?
スマホスタンドやケーブルホルダーは、設計段階でオーバーハング角度を45度以内に抑えれば、サポート材なしで印刷できます。TinkerCADやFusion 360で角度を確認しながらモデリングしましょう。
参考リンク
- TinkerCAD 公式サイト — Autodesk
- Fusion 360 公式サイト — Autodesk
- Thingiverse — 無料3Dモデル共有プラットフォーム — MakerBot
- Printables — 3Dプリント用モデル共有サイト — Prusa Research



